【今、伝えたいこと】 千葉真子の「ベストスマイル」ができるまで 思い出す小出監督の「せっかくだから」
新型コロナウイルス感染拡大により、スポーツ界はいまだかつてない困難に直面している。試合、大会などのイベントが軒並み延期、中止に。ファンは“ライブスポーツ”を楽しむことができず、アスリートは自らを最も表現できる場所を失った。
連載「Voice――今、伝えたいこと」第23回、世界選手権2種目でメダル獲得ランナーからのメッセージ
新型コロナウイルス感染拡大により、スポーツ界はいまだかつてない困難に直面している。試合、大会などのイベントが軒並み延期、中止に。ファンは“ライブスポーツ”を楽しむことができず、アスリートは自らを最も表現できる場所を失った。
日本全体が苦境に立たされる今、スポーツ界に生きる者は何を思い、現実とどう向き合っているのか。「THE ANSWER」は連載「Voice――今、伝えたいこと」を始動。各競技の現役選手、OB、指導者らが競技を代表し、それぞれの立場から今、世の中に伝えたい“声”を届ける。
第23回はマラソン、陸上1万メートルで活躍した千葉真子さんが登場する。活動が制限される現在も、恩師・小出義雄氏からの言葉を胸に日々を送っている千葉さんは、過去の挫折経験からスポーツの力を強く感じている。マイナス思考に陥りがちな生活を過ごす人々には、コロナ終息後に向けた“ワクワク道しるべ”を考えてみてほしいと願った。
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コロナ禍の今、千葉さんにはふと思い出す恩師の言葉がある。
「せっかくだから」
昨年80歳で亡くなった小出義雄氏から常々言われていたフレーズだ。佐倉アスリート倶楽部(SAC)の監督として03年世界選手権銅メダルなどに導いてくれた名伯楽との思い出を振り返り、懐かしそうにこう語ってくれた。
「怪我をしてしまったときや上手くいかない時、小出監督に『せっかくだからこういうことをやろう』とか、前向きな言葉をよくかけていただきました。
怪我をしたときは『今は走れないけど、せっかくだから今のうちに基礎トレーニングをして、記録が向上するようにしていこう』と声かけをしてくださった。それで今、コロナで生活が窮屈になりがちですけど、せっかくだから家にいてできることをやっていこうと考えられます」
マイナス思考に陥りがちな生活の中、明るく指導してくれた小出監督との思い出は今も鮮明に思い出せる。朝、練習場での誰よりも明るい「千葉ちゃん、おはよう!」という挨拶。苦しい時も選手の気持ちを盛り立ててくれる、「太陽のような存在」だった。
「そういう生き方が、自然に私たちにも染み込むというか、伝わって、私自身も前向きにポジティブにやれていたのかなと思います」
恩師の影響も受け、千葉さんがマラソンで一番苦しい30キロ付近から大切にしていたのが「ベストスマイル」というキャッチフレーズ。監督やチームメート、両親や支えてくれたファンと作り上げてきたレースを「走り終えた後にみんなで最高の笑顔で喜び合えたらいいな」という願いを込めた言葉だという。
「走りながらいろんな人の顔が思い浮かんできます。1人きりならスマイルにもなれなかったと思うけど、周囲の人への感謝の気持ちがベストスマイルに詰まっています」