子どもたちは「気づけば答えを出している」 ラグビー強国・フランスのコーチが日本で見せた“真逆”の指導
子どもたちは迷っていい「気づけばしっかり答えを出している」
そうした視点から見ると、コーチングのスタイルも「フランスは真逆でした」という。コーチや先生に教えられて学んでいく日本のやり方は「覚えやすいけれど、形にはまりすぎて『こうしなければいけない』となりがち」だ。ところがトゥールーズのスタッフは、どうやって動くのか、細かい説明をしないままどんどんメニューを進めていった。
「だからみんな『?』となったり、迷うんです。でも気づけば、自分なりにしっかり答えを出している。教えるのか、求めに行くのかの違いは感じました」
そして、ラグビーは肉体のぶつかり合いが避けられない。コンタクトスポーツの典型で、欧米人に比べて体格で劣る日本人は、世界での強みを見出しにくい種目でもある。藤井さんも「コンタクトは技術だと指導しています。初めてラグビーをやるタイミングで、接触はどうしても怖いもの。そこで勇気、気合い、根性じゃなく、効率的なコンタクトがある」というが、トゥールーズの指導法に大きなヒントがあった。
「フランス独自の基準で、ユース世代は上半身に当たりに行ったら反則だというんです。正面からぶち当たるのを反則にして、間に入ってくるタックルをできるように、しっかり下に入れるようにという狙いなのですが、これがいちばんの衝撃でした」
成長の早い遅いによる体格差がある時期は大きな子が圧倒的に有利でも、じきに正面からただ当たるタックルは通用しなくなる。その日のために早くから“技術”を教えるルールが存在するのだ。
キャンプを終えて、学びがあったのは子どもたちだけではない。藤井さん自身の指導にも変化が現れたという。「もともと考えさせることを狙ってやっていましたけれど、もっと考えさせてもいいのかな」と、この2か月は選手を自由にさせる時間が増えた。
「日本だったら怒られるかな? というプレーも、まずは『ナイスプレー』だと伝えるようになりましたね。最初から縛りを入れてしまうと、選手の可能性を狭めてしまうのかなと思うようになりました」。コーチがすぐに答えを与えず、ボールを生かし続けるという哲学だけを伝える。すると頭の柔軟な子どもたちは、自分たちでどんどん答えを見つけていく。強国のジュニア指導にヒントを得ようとする第一歩は、確かな成果を残したようだ。
(THE ANSWER編集部・羽鳥 慶太 / Keita Hatori)