「このままだと国立は埋まらない」 東京世界陸上に危機感、サニブラウンが次世代育成に励む理由
サニブラウン「陸上は一番わかりやすいはずですが…」
いま風に言えば、“箱推し”が難しいのが一つだという。
「個人競技は一人ひとりを応援しないといけない。気軽に応援できないわけではないけど、どうしてもエントリーが難しい。陸上は(運動の)原点であって、勝敗も一番わかりやすいはずなんですけど、『見ていてもわからない』という声は多く耳にします。だから、もっと陸上の理解度を高めることも大切です。
あとは野球やサッカーは年俸が目に見える。陸上競技はプロのシステムが日本で確立されておらず、まだ部活動という粋を脱していないんですね。そういう部分でも、今の子たちはYouTuberだったり、野球選手だったり、目に見えるものが多いものに憧れる傾向があると自己分析しています。
陸上競技はオリンピックのメインイベントと言っても過言ではないスポーツ。陸上競技にお金が回るのもそうですし、もっともっと目に触れて、注目されてもいいんじゃないかなという想いです」
選手にできるのは、競技で結果を出すことだけじゃない。「その外で現役選手もですし、引退した選手も、陸上連盟の方々も総動員してやっていかなきゃいけない」。そこで開催が実現するのが自身の主催大会「DAWN GAMES(ドーンゲームス)」だ。
男女別に100メートルで争われ、対象は小学4~6年生、中学生、高校生。6月9日に西日本エリア予選(ヤンマースタジアム長居)、6月29日に東日本エリア予選(大井ふ頭中央海浜公園スポーツの森)を行い、各カテゴリーの上位8人が秋の決勝大会に出場する。
DAWNは英語で「夜明け、始まり」を意味する。「日出る国」の日本に因み、「このチャンスから飛躍してほしい」という想いを込めて命名した。特徴的なのは決勝大会の上位者に与えられる特典。未定部分があるものの、「TEAM Hakim」のメンバーに選出し、自身が拠点を置く米国の施設などに招く構想もあるという。
「世界を見て、肌で感じる」という特典を取り入れたいのは、高校卒業後に米フロリダ大に進んだ自身の経験が基になっている。
「いろいろなものを見て、肌で感じて今の自分があります。『海外が絶対に全員に合っている』とは思わないですが、少なからず海外に触れる機会は必要。自分がどの位置にいるのか、一番わかる機会です。日本で活躍して急に世界の舞台にポンッて入れられて戸惑うより、少しでも目と肌で感じるだけで心に余裕ができます。人生全体でも役に立つ経験。非常に大事にしていきたい部分ですね」