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世界で通用する選手とは? G大阪アカデミーが取り組む「人としての成長」への投資

サッカーのカタール・ワールドカップ(W杯)で、日本代表は強豪のドイツとスペインから大金星を挙げ、“死の組”と呼ばれたグループリーグを突破し世界を驚かせた。史上初のベスト8進出こそ逃したものの、日本サッカーの着実な成長を導いた根底にあるのが育成年代の充実だろう。その筆頭と言える存在であるガンバ大阪の下部組織で、スカウトとして多くの才能を発掘し、アカデミー本部長も務めた二宮博氏を、ドイツで20年以上にわたって育成年代の選手を指導する中野吉之伴氏が取材。プロクラブとして選手を育成する上で大切な視点について話を聞いた。(取材・文=中野 吉之伴)

2015年の高円宮杯U-18チャンピオンシップでプレーするG大阪ユース時代の堂安律(右)【写真:Getty Images】
2015年の高円宮杯U-18チャンピオンシップでプレーするG大阪ユース時代の堂安律(右)【写真:Getty Images】

G大阪元スカウト・二宮博氏インタビュー第3回

 サッカーのカタール・ワールドカップ(W杯)で、日本代表は強豪のドイツとスペインから大金星を挙げ、“死の組”と呼ばれたグループリーグを突破し世界を驚かせた。史上初のベスト8進出こそ逃したものの、日本サッカーの着実な成長を導いた根底にあるのが育成年代の充実だろう。その筆頭と言える存在であるガンバ大阪の下部組織で、スカウトとして多くの才能を発掘し、アカデミー本部長も務めた二宮博氏を、ドイツで20年以上にわたって育成年代の選手を指導する中野吉之伴氏が取材。プロクラブとして選手を育成する上で大切な視点について話を聞いた。(取材・文=中野 吉之伴)

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 プロスポーツの育成機関が重要視するなかに、プロ選手を、さらには世界で通用する選手を自分たちのアカデミーから輩出するというのがある。

 では世界で通用する選手というのはなんだろう? 選手はどんな環境でサッカーをし、そして生活をすることが大切なのだろうか。

 2016年度にJリーグ最優秀育成クラブ賞に選出されたガンバ大阪育成アカデミーで本部長を務めていた二宮博は、アカデミー改革立役者の1人だ。スカウトとしてカタールW杯に出場した日本代表の鎌田大地や堂安律といった選手の育成に関わってきた。そして本部長時代には育成でプレーする選手の生活環境を、もっと良いものにできないかというテーマと向き合い続けていた。

「以前の環境というのは、選手は自分の家の近所の学校に通いながら、高校生でしたら18時に大阪府吹田の万博に集合してトレーニングという形でした。どちらかというと塾に近い形ですよね。でもそれって、選手たちとは1日わずか2時間のお付き合いですよね。それだと見えない部分もたくさんあります。

 それに関西エリア全体から選手は通って来ていたのですが、それこそ滋賀県から来ている子もいたわけです。練習が18時から20時まであったとしたら、終わって急いで帰っても家に着くのが23時になってしまう。帰宅時間が遅いということは、当然ベッドに入る時間も遅くなるし、睡眠時間も短くなる。食事もそうです。そうした非常にハードワークな毎日を過ごしながら、本当に学校の勉強ができるのか、と。

 ガンバとしては育成アカデミーの選手を、もっと人としての成長を大事にしようとプロジェクトをスタートさせたんです。そこで選手がもっと無理なく教育を受けられるように、育成アカデミーと高等学校との提携を模索したんですね。そして寮も完備するようにしました。当時責任者だった私がやっていたことです。私たちは子供たちの学校生活を全く知らなかった。でももっと子供たちの学習面、生活指導面にも関わって、子供たちの良さを引き出して、それがピッチ上でのプレーにも反映されてという環境作りをしていったんです」

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中野 吉之伴

1977年生まれ。ドイツサッカー連盟公認A級ライセンスを保持する現役育成指導者。ドイツでの指導歴は20年以上。SCフライブルクU-15チームで研鑽を積み、現在は元ブンデスリーガクラブであるフライブルガーFCのU12監督と地元町クラブのSVホッホドルフU19監督を兼任する。執筆では現場での経験を生かした論理的分析が得意で、特に育成・グラスルーツサッカーのスペシャリスト。著書に『サッカー年代別トレーニングの教科書』(カンゼン)、『ドイツの子どもは審判なしでサッカーをする』(ナツメ社)がある。WEBマガジン「フッスバルラボ」主筆・運営。

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