高校球児1030人調査した体組成データで分析 140キロを投げる投手に共通する身体的特徴
選手の「行動変容」を促すための指標づくり
笠原氏が行った調査プロジェクトは、2020年10月から2021年1月までの間に、1030人の高校1、2年生の野球選手を対象に体組成(※2)とパフォーマンスの関係性を解き明かそうというもの。かねてより、強くなるための、“どか飯”だとか、“食トレ”などのキーワードを聞いたことがある人もいるかもしれないが、笠原氏はむやみに食事を増やすことや根拠のはっきりしない「野球選手の増量とパフォーマンスの偏った情報」を信奉することを危惧していた。しかしどのように身体をつくれば、どのようなパフォーマンスに結びつくのか、これまで統一した機材や測定条件により定量的に調査・研究されたケースはほとんどなく、このキーワードで指導するには説得力に欠ける。
そこで笠原氏は自身が築いてきた高校野球部の指導者およびそこに関わるメディカル・コンディショニングスタッフとのネットワークを生かして、体組成の計測とパフォーマンス測定調査の協力をあおぎ、調査を開始した。
「野球という競技では強く・遠くに『打つ』、速く・正確に『投げる』、速く『走る』。この3つの動作が大切ですが、選手によって体格に恵まれている人、そうでない人がいます。そこで筋肉ならどこの部位を鍛えれば、どのようなパフォーマンス向上に影響するのか、選手がトレーニングの目標を設定できるような指標を見つけられるようなイメージをして調査していきました」
まずは投手の調査内容・分析結果を紹介する。
調査した対象投手を球速<1>140km/h以上(平均143±2.0km)、<2>130km/h以上139km/h以下(平均134±3.0km)、<3>120km/h以上129km/h以下(平均125±2.9km)、<4>120km/h未満(平均113±5.5km)、の4群に分けて分析をした(投球フォームはオーバースロー、スリークォーターに限定)。
・上肢(投球腕・非投球腕の上腕・前腕)の周径囲
・体幹(胸囲・腹囲・臀囲(おしり))の周径囲
・下肢(軸足・ステップ足の大腿・下腿)の周径囲
・体組成(体重・体脂肪率・除脂肪量※3)