小学生が17年で46%減った日本柔道の競技人口 子どもに伝えるべき「勝利以外の価値」
盛り上がった柔道教室、一方で生まれた課題「悲しい思いをさせてしまった」
そんな柔道の魅力を伝えるため、やるべきことは「本当にいっぱいある」と苦笑いする。選手がやるべき課題として「もっと競技以外での活躍をすべき」と例を挙げた。
「本当に小さなことですが、試合後に会場で子どもたちに握手を求められたら対応する。『頑張ってね』と一言添えて肩を叩くとか。それを親御さんが見て『柔道選手ってしっかりしてる。柔道をやらせてみたいね』と思うかもしれない。やらなければ、『柔道選手って怖いな』と思われてしまうかもしれない。だから、選手にはもっともっと意識してやってほしいなって僕は思います」
自身は全柔連のアスリート委員を務め、大会後にツイッターで運営方法や改善点をファンにアンケート。実際に担当者に伝え、より良くなるよう動いている。2020年の緊急事態宣言下でも、SNSを活用してトレーニング方法などを積極的に発信。多くの選手を巻き込み、競技発展に力を注いできた。
コロナ禍で減ってしまったが、以前は年間7、8回ほど柔道教室を開いていた。経験者に技術を伝えるのはもちろん、初めて柔道に触れる子たちに魅力を伝えることを意識。重量級選手が実演してみせた。100キロ前後の選手が投げ合う音、スピードは大迫力の光景。親子参加型にする工夫を凝らし、大いに盛り上がった。
「魅力を伝えるために、最初に話だけをしても伝わらないんです。受け身や礼儀も大切ですが、まずは子どもたちに僕たちを投げさせる。『すごーい!』ってなるんですよ。その後、今度は選手がお父さんたちを投げちゃう。『やばい、お父さんが投げられた!』って。そこで『柔道ってこんなにすごいんだ!』と思ってもらえるようにしています」
目を輝かせる子どもたち。その様子を語る羽賀の声も嬉しそうに弾んでいた。
ただ、盲点を突かれた経験もある。柔道教室の後、参加者のあるエピソードを聞かされ、「リアルな課題」を知った。
「その後のケアができていなかったんですよ。親御さんが近くの道場に行ったらしく、そこでは80歳ぐらいの方が1人で教えていて、生徒が7人ぐらいいた、と。でも、最初の2週間は受け身だけだったらしいです。自分も頭が回っていなかったと反省しました。
もちろん受け身も、礼法も大切ですが、最初の2週間ずっと受け身だけをするのは大人でも飽きると思う。次の段階へのアプローチを全くできていなかった。柔道は面白い、かっこいいぞって伝えたのに、かえって悲しい思いをさせてしまいました」