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「同学年だから」では優遇しない 堀越高主将がスタメン決定、「僕なら無理」と監督も驚く評価基準

選手たちの成長を実感する佐藤実監督。スタメンを決める主将の姿に驚かされることもあるという【写真:徳原隆元】
選手たちの成長を実感する佐藤実監督。スタメンを決める主将の姿に驚かされることもあるという【写真:徳原隆元】

先輩から伝統を引き継ぎ、チームの強みに

 彼らの冷徹さの根底には「だってオレたち、なんのためにやってるの?」という高い次元で共有された信念がある。逆にそういう選手たちだからこそ、全国高校サッカー選手権への出場権を懸けた東京都予選の決勝でも、冷静に相手の出方を見極めた戦術変更から勝利を掴み取ることができたに違いない。

「決勝戦は今年のベストゲームだったかな、と思っています。特に前半はゲームプランがほぼ完璧にはまり、こちらがデザインした通りにプレッシャーをかけ、きちんとボールを握り攻め込むことができていた。後半は相手の時間帯もありましたが、しっかりと耐え抜くことができました」

 堀越には勝つ伝統が築かれつつあり、大舞台での勝負強さが目立つようになっている。

「もう堀越のユニフォームを着て東京都予選決勝の舞台に立ち、緊張し過ぎて力を出せないような選手はいなくなりました。それは代々の先輩たちが、しっかりとチームの引き継ぎをやってくれてきたからです。例えば健太も吉荒も、前回出場した2年前の選手権ではピッチに立っています。そこは彼らも先輩たちに感謝をしなければいけない」

 全国高校選手権の組み合わせ抽選が済み、選手たちは目標を「ベスト4」に定めた。

「チーム内では『やる以上は優勝』という声も出ました。でも堀越には先輩たちから引き継いだ伝統があり、それが強みになっている。

 逆に今の選手たちは、先輩たちに『堀越、こんなんでいいの?』と思われたくなくて、日々のトレーニングに真摯に打ち込んでいます。だからベスト4というのは、国立でやりたい等の理由より、先輩たちが築いてきてくれたものに最大限のリスペクトを込めて、3年前の史上最高の堀越を超えるという目標設定なんです」

 最近4年間で3度目の選手権出場となる堀越だが、佐藤監督にはこれほど上手くいくシナリオは描けていなかった。自身も堀越出身の佐藤には、今年が母校の100周年だという認識があり「おぼろげながら、そのタイミングで選手権への出場を果たして、学校にワクワク感を与えられたらいいな」という希望が芽生えつつあった程度だったそうだ。

「それが日野たちの代に、あれよあれよという感じで99回大会に出場し、翌年の100回大会にも出ちゃった。学校には環境整備などで本当にお世話になってきたので、分かりやすい形で恩返しができたのは良かったと思います。でも、だからといって学校創立100周年の今年は是が非でも、というプレッシャーは別になかった。理事長をはじめ周囲からも『絶対に(全国へ)行ってね』とは言われたことがないし、僕自身がやっていることは例年と変わりがありませんから」

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加部 究

1958年生まれ。大学卒業後、スポーツ新聞社に勤めるが86年メキシコW杯を観戦するために3年で退社。その後フリーランスのスポーツライターに転身し、W杯は7回現地取材した。育成年代にも造詣が深く、多くの指導者と親交が深い。指導者、選手ら約150人にロングインタビューを実施。長男は元Jリーガーの加部未蘭。最近、選手主体のボトムアップ方式で部活に取り組む堀越高校サッカー部のノンフィクション『毎日の部活が高校生活一番の宝物』(竹書房)を上梓。『日本サッカー戦記~青銅の時代から新世紀へ』『サッカー通訳戦記』『それでも「美談」になる高校サッカーの非常識』(いずれもカンゼン)、『大和魂のモダンサッカー』『サッカー移民』(ともに双葉社)、『祝祭』(小学館文庫)など著書多数。

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