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大人が限界を決めるのは「物凄く危険」 卒業後に飛躍、U22日本代表MFが証明した“堀越流”の成果

日野翔太が卒業後に見せた飛躍的な成長

 堀越サッカー部が、当時コーチだった佐藤の下で選手たちが主体的に考え行動するボトムアップ方式に切り替えて11年目になる。この間にチームは急成長を遂げてきたわけだが、むしろ主眼は在学中の3年間で短期的な成果を挙げることより、自立して社会で貢献できる人間を育成することにあった。

 それだけに佐藤は、日野を筆頭とするOBたちの卒業後の活躍が嬉しい。

「堀越で主将を務めたような選手たちは、責任が自分たちにあることを自覚して体験し、今何が必要なのかを考えて結果に繋げてきました。彼らは周りの仲間たちのいろんな考えに耳を傾けながらも、最終的には自分で采配をふるいカードを切ってきた。やはりそういう人間は、社会に出ても強いと思います」

 3年前に高校選手権でベスト8進出を牽引した日野も、拓殖大学へはサッカーを武器に推薦入学をしたわけではなかったという。

「僕が携わった選手の中では何本かの指に入る存在でしたが、まだ堀越は全国大会に出て行くような学校ではなかったし、コロナ禍だった影響もあり大学のリサーチに引っかからなかったんでしょうね。拓殖大学へは指定校推薦で入学しました」

 ところがそんな日野が新入生だけでも90人近い大所帯で、春先からレギュラーに抜擢され、大学選抜、さらにはU-22日本代表としてアジア大会出場と一気に階段を駆け上がり、早くも3年時の今年はJ1チームとの契約を果たした。

「純粋にサッカーの能力が高いのは大前提ですが、高校では自分が試合に出場する選手を選ぶ側にいたので、大学に入り選ばれる側に回った時にも逆の立場のことがよく分かる。堀越では彼自身がチーム全体をオーガナイズしなければならなかったわけですが、今度は日野翔太という選手をどうプロデュースすれば売り込めるのか考えていけばいい。ただ上手いとか頑張るだけの選手は、試合を重ねていくとエネルギーが落ちてくることもありますが、きっと指導者には日野のサッカーに向き合う姿勢や覚悟などが見えて『コイツなら絶対にゲームを持ってくるな』と感じるのだと思います。

 鳥栖の川井健太監督にしても、敢えてJ1の公式戦で大学生の強化指定選手を使うからには、きっと相応の理由がある。堀越でキャプテンを務めた経験は、間違いなく普通の選手が持たない武器になっているはずです」

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加部 究

1958年生まれ。大学卒業後、スポーツ新聞社に勤めるが86年メキシコW杯を観戦するために3年で退社。その後フリーランスのスポーツライターに転身し、W杯は7回現地取材した。育成年代にも造詣が深く、多くの指導者と親交が深い。指導者、選手ら約150人にロングインタビューを実施。長男は元Jリーガーの加部未蘭。最近、選手主体のボトムアップ方式で部活に取り組む堀越高校サッカー部のノンフィクション『毎日の部活が高校生活一番の宝物』(竹書房)を上梓。『日本サッカー戦記~青銅の時代から新世紀へ』『サッカー通訳戦記』『それでも「美談」になる高校サッカーの非常識』(いずれもカンゼン)、『大和魂のモダンサッカー』『サッカー移民』(ともに双葉社)、『祝祭』(小学館文庫)など著書多数。

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