大人が限界を決めるのは「物凄く危険」 卒業後に飛躍、U22日本代表MFが証明した“堀越流”の成果
日本のスポーツ界で「選手主体」の指導の大切さが叫ばれる中、育成と結果を両立させているチームの1つが、堀越高校サッカー部だ。11年前、佐藤実監督がボトムアップ型の指導を導入すると、2020年度の全国高校サッカー選手権に29年ぶりの出場。21年度大会にも2年連続で出場すると、今年度も2年ぶりの全国行きを決めるなど、着実に選手主体の指導の質を高めている。そして指揮官が何よりも誇るのが、OBたちの卒業後の活躍だ。今年のアジア大会にU-22日本代表の一員として参戦し、サガン鳥栖の特別指定選手としてJリーグデビューも果たした日野翔太はその代表格で、彼らの存在が現役生に与える影響は大きい。佐藤監督はボトムアップ方式を経験したことが、高校卒業後の飛躍につながっていると言葉に力を込める。(取材・文=加部 究)
堀越高校サッカー部「ボトムアップ指導11年目の結実」第3回
日本のスポーツ界で「選手主体」の指導の大切さが叫ばれる中、育成と結果を両立させているチームの1つが、堀越高校サッカー部だ。11年前、佐藤実監督がボトムアップ型の指導を導入すると、2020年度の全国高校サッカー選手権に29年ぶりの出場。21年度大会にも2年連続で出場すると、今年度も2年ぶりの全国行きを決めるなど、着実に選手主体の指導の質を高めている。そして指揮官が何よりも誇るのが、OBたちの卒業後の活躍だ。今年のアジア大会にU-22日本代表の一員として参戦し、サガン鳥栖の特別指定選手としてJリーグデビューも果たした日野翔太はその代表格で、彼らの存在が現役生に与える影響は大きい。佐藤監督はボトムアップ方式を経験したことが、高校卒業後の飛躍につながっていると言葉に力を込める。(取材・文=加部 究)
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堀越高校サッカー部は、一見してスロースタートの傾向がある。佐藤実監督は「ずっと右肩上がりがいいよね」と選手たちに声をかけ続けているので、それはチームの色として定着しつつあるのかもしれない。
「春先は良かったけれど後半ダメだった、というよりは良いと思っています。どんな組織も急激に上がったら落ちるのも速いと言われます。逆に堀越サッカー部は、失敗も成功も繰り返しながら、負けている時でも必要な経験を積み上げている。そしてそれを支え、後押ししてくれているのがOBです」
もちろん選手たちは、毎日真剣にサッカーに向き合い、取り組む方向性に間違いがないことを確認しながら歩を進めていく。だが卒業後も結果を出しているOBの台詞は、魔法の威力を持つ。
「3年前(第99回全国高校サッカー選手権ベスト8)の主将だった日野翔太は、拓殖大学3年生で鳥栖と契約したわけですが、先日母校を訪れ『今は結果が出ていなくても、みんながやっていることは絶対に間違いないから』と力強く話してくれました。誰もがキラキラ目を輝かせて聞いていましたよ。東京国際大学へ進んだ尾崎岳人も関東大学リーグでハットトリックをした後のオフの日に来てくれたし、日野の前の主将だった坂本琉維や井上太聖(ともに順天堂大)も顔を見せてくれています。
彼らには、ここで3年間を過ごしたからこその結束があり、堀越では卒業生も含めて活動をしているような感覚がある。『今年の代は弱いから』なんて言葉は絶対に出てこないし、逆にOBも含めて『責任はオレたちにもある』と言い続けています」