「僕自身バカにされていた」 ボトムアップ提唱者、森保流に感じた“日本型指導”の変化
大事なのはトップダウンとボトムアップの割合
――森保監督の日本代表で「提案が上がる文化」ができたのは、なぜだと思いますか。
「ボトムアップが機能するには、信頼関係を築くことが大事です。僕は、指導者が信頼を勝ち取る3か条があると考えていて、一番は見本(生き様)を見せることだと思っています。2番目は覚悟、本気、やる気を伝える。3つ目は気づかせたり、支えたりという支援。森保監督はそういうようなことを愚直にやっていたような感じがありますね。日本代表が解散式をした後、全員がホテルから出るまでロビーで1人ずつ見送ったとか。本人から聞いたことがあるんですが、まずは自分から『今日どうだった?』『調子どう?』って声をかけて、対話式にコミュニケーションを取っていくようにしているとか」
――コミュニケーションが上手いんですね。
「でも広島にいる時、風呂で会ったら、子供たちと意思疎通が上手くいかないと話していた時期がありました。(Jリーグや日本代表で活躍した)ポイチなら話を聞くだろ、って言ったら、今の子はポイチなんて知らないですよ、みたいな話をして。サッカーの実績を背景に伝えようとしても、人間関係ができていないとダメだと感じたのではないでしょうか。サンフレッチェ監督時代に出版した著書『プロサッカー監督の仕事』の中で『非カリスマ型マネジメント』『脱トップダウン』という言葉を使っていますが、上手くいかなかった経験を通してたどり着いたのかもしれませんね」
――ボトムアップ理論では、トップダウンを否定しているのですか?
「違います。トップダウンとボトムアップの割合が大事なんです。森保監督も日本代表で併用して使ったと記事などで伝えられていますが、同じように理解しているのだと思います。私たちは『トップボトムアップ』という言葉で表現して、2つを融合させたマネジメントがいいと考えています。融合させてイノベーションを起こすのです。トップダウンもボトムアップも100%では難しい。まったく新しいチームがスタートする時など、状況によってはトップダウンの割合が高いほうがいい場合もあります。
僕はトップダウンとボトムアップが『2:8』くらいで組織を創ることをよくやっています。例えば、サッカーの攻める戦術だったら、全員攻撃・全員守備はやりますよ、それに向けてあなたたちはどのように構築していきますか、と問いかけるイメージです。ボトムアップって丸投げ放任でしょ、なんて言われることもありますが、そうじゃなくて、緻密な人と人とのマネジメントが必要で、森保監督はそのあたりを上手くやっているのだと思います」