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「僕自身バカにされていた」 ボトムアップ提唱者、森保流に感じた“日本型指導”の変化

初めてのU-16日本代表コーチで自身の行動に違和感

――ボトムアップ的な考えは学べるということですね。

「はい。そういうマインドを創っていくことが大事だと思います。2009年にU-16日本代表のコーチになってある大会に参加した時、監督からほとんど指示がなかったんですよ。初めての代表コーチで、がんばって言われたことをしっかりやろうと思って行ったんですが、2日経っても3日経っても声がかからない。なんかおかしい、そういえば言われたことしかやっていない、もっと能動的に動かなければいけないと気づいた。監督に『それやりますから任せてください』と言ってやり始めたら、『じゃあ攻撃は畑くんやって』と任されるようになった。自分自身がボトムアップでやっていながら、初めての代表コーチで頑張ろうとすることで、知らない間にトップダウン的なイメージで入ってしまった。監督は大熊裕司さんで、(イビチャ・)オシム監督の下で学ばれたコーチだった。その後、オシム監督の手法を本などで調べると、大熊監督と同じだった。実際に会ったことはないのですが、オシムさんもボトムアップで考えさせて育てる人だったんだと思います。改めてトップの姿勢は大事だということも分かりました」

――今回のW杯は優勝経験のあるドイツ、スペインに逆転勝ちし、決勝トーナメントへ進出という成果を残したので評価されましたが、4年後にどうなるか分かりません。代表監督は結果の求められる仕事で、批判される可能性もあります。

「どう取り組んだのか、どういう心構えでやったのかというプロセスも、周りがしっかりと評価できるようにならないといけない。結果が出ていても出ていなくても、そこに成長があったかどうかが大事。決勝トーナメントのクロアチア戦でPKを蹴る順番を立候補制で決めました。外したことを批判する声もありましたが、失敗すれば叩かれることもイメージできたなかで自ら手を挙げたことを称えたい。森保監督も、以前の監督が上手くいった点と上手くいかなかった点を全部分析して臨んだようだが、日本代表はずっと続いていくことなので、失敗も財産になるわけですから。

 代表監督になってから、メールで応援のメッセージを送ると、いつも私より長い返信を送ってきてくれる。そこによく書かれているのは『共闘』という言葉です。インタビューでもよく言っていました。僕らが頑張るから、みんなついてきて、ではなく、みんなで戦うんだ、という思いが強い。ボトムアップは周りを巻き込んで、みんなが主役になって、みんなで成長していくものだと考えているので、僕も一緒にやっていくことに誇りを持ちたい」

■畑 喜美夫(はた・きみお)

 1965年広島県生まれ。小学校2年生から広島大河フットボールクラブでサッカーを始め、静岡・東海大一(現・東海大静岡翔洋)高でU-17日本代表、順天堂大でU-20日本代表。4年時にボランチとして関東選手権、総理大臣杯、全日本インカレの3冠を果たし、1988年ソウル五輪の日本代表候補となる。卒業後、広島県の教員となり、廿日市西高に勤務をしながら広島大河FC(中学部)の監督として全国大会へ6回出場。1997年に広島観音高へ赴任してサッカー部監督となり、2006年には全国高校総体で初出場初優勝。選手に自ら考えて積極的に行動する力を引き出す指導方法が「ボトムアップ理論」として注目された。2009年にはU-16日本代表コーチを務めた。2019年に教員を退職し、「一般社団法人ボトムアップパーソンズ協会」代表理事として人財育成や組織構築の支援、講演などの活動をしている。

(松本 行弘 / Yukihiro Matsumoto)

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