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いじめ、パワハラ…教育界の現状に危機感 高校サッカー日本一監督、教員辞め全国巡る理由

綺麗で整った場所での活動がプラスの効果を生み出すと語る畑喜美夫氏【写真提供:相生学院】
綺麗で整った場所での活動がプラスの効果を生み出すと語る畑喜美夫氏【写真提供:相生学院】

自発的で前向きな挨拶や掃除は「プラスの効果を生み出していく」

 また現在は広島で、日本料理、イタリアン、居酒屋と3店舗のGMも務めている。

「3店舗ともコロナ禍が一息ついた昨年の11~12月には、過去最高の売り上げを記録しました。料理もスポーツも創る(やる)のは人です。人間は悪いものを見れば気持ちが荒むし、良いものを見れば心が澄んで明るくなる。良い人間性の持ち主がプレーする競技は素敵だし、そういう人たちが創る料理も美味しくなります。

 その人間性の土台となるのが、自発的で前向きな挨拶や掃除なんです。綺麗で整った場所で仕事をすれば、人が連動してプラスの効果を生み出していく。サッカーも同じ。そういう状態でプレーする方が、学びの姿勢も良くなるし、吸収力や表現力も変わっていきます」

 現在サッカーの日本代表を指揮する森保一監督も畑氏とは交流があり、自著では「脱トップダウン」の指導を推奨している。

「チームミーティングでも全体像を伝えたら、早く自分の存在を消すことが大事だと話していました。細部まで逐一指示をしていくと、ある程度までは行けても、その先へは進めない。ピッチ上での表現まで介入すると、選手たちの判断力や創造性を損なってしまう。だから敢えて選手たち同士のコミュニケーションを促す。森保監督は、そう考えているんです」

 また畑氏のボトムアップ理論の原型となった広島大河FCの後輩にあたる元日本代表の田坂和昭氏も、同じ理論をプロに導入しようと勉強中だという。

「そのために1年間は、しっかりと学んでいるところですが、サッカーをよく知る選手たちが集まってくるプロだからこそ、ボトムアップ方式が活きるのではないかと思います」

 ボトムアップ方式に定型はない。グループに関わる人たち全員が主役となり、積極的にアイデアを発信していくから、その中で独自のスタイルが生まれていく。

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加部 究

1958年生まれ。大学卒業後、スポーツ新聞社に勤めるが86年メキシコW杯を観戦するために3年で退社。その後フリーランスのスポーツライターに転身し、W杯は7回現地取材した。育成年代にも造詣が深く、多くの指導者と親交が深い。指導者、選手ら約150人にロングインタビューを実施。長男は元Jリーガーの加部未蘭。最近、選手主体のボトムアップ方式で部活に取り組む堀越高校サッカー部のノンフィクション『毎日の部活が高校生活一番の宝物』(竹書房)を上梓。『日本サッカー戦記~青銅の時代から新世紀へ』『サッカー通訳戦記』『それでも「美談」になる高校サッカーの非常識』(いずれもカンゼン)、『大和魂のモダンサッカー』『サッカー移民』(ともに双葉社)、『祝祭』(小学館文庫)など著書多数。

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