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いじめ、パワハラ…教育界の現状に危機感 高校サッカー日本一監督、教員辞め全国巡る理由

広島観音高校サッカー部を2006年の全国高校総体(インターハイ)で優勝に導き、当時監督だった畑喜美夫氏が提唱した「ボトムアップ理論」は大きな反響を呼んだ。選手自らが考え、行動する力を引き出す指導法はその後、多くのチームや組織で取り入れられている。そんな日本の育成現場に新しい風を吹き込んだ畑氏が、創部3年で兵庫県大会準優勝を果たした相生学院高校サッカー部のゼネラルマネージャー(GM)に就任。部活を中心に広まった指導論は今や企業や飲食店などにも導入されており、それぞれの組織にポジティブな雰囲気を生み出しているという。(取材・文=加部 究)

相生学院高校サッカー部のゼネラルマネージャー(GM)に就任した畑喜美夫氏【写真提供:相生学院】
相生学院高校サッカー部のゼネラルマネージャー(GM)に就任した畑喜美夫氏【写真提供:相生学院】

連載「ボトムアップ理論で描く未来」第3回、畑喜美夫氏の指導論に興味を示した企業

 広島観音高校サッカー部を2006年の全国高校総体(インターハイ)で優勝に導き、当時監督だった畑喜美夫氏が提唱した「ボトムアップ理論」は大きな反響を呼んだ。選手自らが考え、行動する力を引き出す指導法はその後、多くのチームや組織で取り入れられている。そんな日本の育成現場に新しい風を吹き込んだ畑氏が、創部3年で兵庫県大会準優勝を果たした相生学院高校サッカー部のゼネラルマネージャー(GM)に就任。部活を中心に広まった指導論は今や企業や飲食店などにも導入されており、それぞれの組織にポジティブな雰囲気を生み出しているという。(取材・文=加部 究)

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 相生学院高校サッカー部のGMに就任した畑喜美夫氏は、現在教職を退き「一般社団法人ボトムアップパーソンズ協会」を設立。代表理事としてボトムアップ理論を浸透させるために忙しく全国を駆け巡っている。

「自分が携わるチームだけが良くなることを考えるなら、退職する必要はなかった。でも、いじめやパワハラなどで大きな事件が起こっている教育界の現状に対し、少しでも風穴を開けられないかと思うと、1人の教員の立場では限界がある。今はボトムアップ的思考を広め、笑顔で暮らせる社会を創るために学校や企業の教育に力を尽くしています」

 畑氏自身がサッカー選手として活躍し、指導者としても広島観音高校を全国制覇に導いたため、最初はボトムアップ方式も部活を中心に広がりを見せた。昨年度の全国高校サッカー選手権にも同理論を採用する堀越高校(東京)や北海高校(北海道)が出場を果たし、同じくラグビーでも静岡聖光学院高校(静岡)が全国の舞台へ進んでいる。

 だが、それ以上に興味を示したのが、上意下達のトップダウン型の管理が浸透し、様々な問題に直面することになった教育界や企業だった。例えば広島を拠点に年商600億円を超える「伯和グループ」には、畑氏が1年間ほど関わった。

「規模の大きな企業ゆえに、どうしても社員が指示待ちになりがちでした。しかしボトムアップ思考を取り入れたことで、8つの部署すべてで仕事に取り組む姿勢が変わり社内が明るくなりました。伯和ビクトリーズという野球チームも、日本選手権や都市対抗の常連となっています」

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加部 究

1958年生まれ。大学卒業後、スポーツ新聞社に勤めるが86年メキシコW杯を観戦するために3年で退社。その後フリーランスのスポーツライターに転身し、W杯は7回現地取材した。育成年代にも造詣が深く、多くの指導者と親交が深い。指導者、選手ら約150人にロングインタビューを実施。長男は元Jリーガーの加部未蘭。最近、選手主体のボトムアップ方式で部活に取り組む堀越高校サッカー部のノンフィクション『毎日の部活が高校生活一番の宝物』(竹書房)を上梓。『日本サッカー戦記~青銅の時代から新世紀へ』『サッカー通訳戦記』『それでも「美談」になる高校サッカーの非常識』(いずれもカンゼン)、『大和魂のモダンサッカー』『サッカー移民』(ともに双葉社)、『祝祭』(小学館文庫)など著書多数。

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