スポーツ特待生に「競技だけ」の甘え許さず 「条件は?」という保護者の声も…勉強を疎かにさせない箱根常連校の規律
第101回東京箱根間往復大学駅伝(箱根駅伝)が1月2、3日に行われる。「THE ANSWER」は令和を迎えた正月の風物詩を戦う各校の指導者に注目。中央学院大を監督2年目で箱根駅伝に導いた川崎勇二監督は、第101回大会の出場を含めて24回の出場を誇る名将だ。22歳からコーチ業を始め、現在に至るまで培われた指導論、指導理念は、どういうものなのだろうか。(全4回の第2回、聞き手=佐藤 俊)
「箱根駅伝監督、令和の指導論」 中央学院大・川崎勇二監督/第2回
第101回東京箱根間往復大学駅伝(箱根駅伝)が1月2、3日に行われる。「THE ANSWER」は令和を迎えた正月の風物詩を戦う各校の指導者に注目。中央学院大を監督2年目で箱根駅伝に導いた川崎勇二監督は、第101回大会の出場を含めて24回の出場を誇る名将だ。22歳からコーチ業を始め、現在に至るまで培われた指導論、指導理念は、どういうものなのだろうか。(全4回の第2回、聞き手=佐藤 俊)
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――川崎監督が指導で大切にしていることは、どんなことでしょうか。
「私が心掛けていることは、否定から入らないこと。そして、自分はできないんじゃないか、遅いからダメというネガティブな思考を排除してあげることです。うちに来る学生は高校のエースみたいな選手はほとんどいなくて、2番手、3番手、それ以下の選手もいます。陽の目を浴びていないので、やっぱり自分はダメだと思う子が多いので、それを取り除いてあげないと飛躍できないんです。『君はできるんだよ』ということを思わせてあげることが一番大事だと思います」
――どういうアプローチをしていくのですか。
「その子を勧誘する時に、君はこうするともっと強くなる。うちに来たらエースに勝てるようにしてあげるよって言葉は必ず伝えます。今の子たちは、『こういうところを直せば勝てるようになるよ』というと、箱根に出たいという意識が強い子が多いので、素直に聞いてくれます。そうして、うちに来てくれた子には、話し合いをしながらこうやれば強くなれるというキッカケを与えてあげるようにしています」
指導者は単に自分の経験則だけではなく、過去に指導者から受けた教えや異業種の指導者や書籍などからも情報を得て、指導の幅を広げていく。川崎監督も恩師と呼ばれる人や陸上とは全く異なる世界から多くを学んだという。
――指導する上で影響を受けた監督、コーチはいらっしゃいますか。
「高校(報徳学園)の恩師で、もうお亡くなりなられたのですが、鶴谷(邦弘)先生と大学時代の恩師である澤木(啓祐)先生です。お二人とも指導者として素晴らしい方ですが、指導が真逆なんです。鶴谷先生は、理論とかはほとんどなく、勘というか感覚を大事にされて、長距離は距離を走ればいいみたいな感じです。澤木先生は、もう理詰めで、レベルの高い練習をやらないと強くならないという指導でした。お二人のいいところを真似しながら自分の指導を確立してきたという感じです」
――異業種の指導などから影響を受けることがありましたか。
「古武術からは大きな学びと影響を受けました。治療してもらっていた先生から『こういう本があるのでおもしろいから読んでみろ』と言われたのがキッカケです。のちに巨人の桑田(真澄)投手が取り入れていましたが、『無駄なく、無理なく』という発想が面白いなと思いましたし、それからは選手のフォームをすごく見るようになりました。フォームがきれいだと怪我もしないし、長く走れるんです。すると選手の記録が向上する。今もフォームを見るのはつづけています。古武術との出会いは、私にとって非常に大きかったですね」