“高校野球らしくない”指導でセンバツ有力 元巨人・佐藤洋監督が変えた東北高の練習風景
目の前の試合を「純粋に楽しむ」選手の姿に安堵
秋の戦いを終え、佐藤は安堵した。結果が出たことに対してだけではない。選手たちが楽しそうに野球をしていたからだ。どんなに打てなくても、負けそうな雰囲気が漂っていても、選手たちは笑顔のままで、ベンチでは全員で対策を練り、馬鹿話もしていた。
「こいつらは大丈夫だ。何も邪魔する必要はないな」
佐藤は選手に求められた時しかサインを出さず、常に一歩下がって試合を見つめていた。
「子どもたちはとにかく、目の前の試合を純粋に楽しんでいる。子どもの可能性は無限大で、教わることのほうが多いんですよ。教えるなんて、とんでもない」
プロ野球を経験し、長く少年野球に携わってきた佐藤だからこそ辿り着いた、指導者としての新境地だ。(文中敬称略)
(川浪 康太郎 / Kotaro Kawanami)