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侮ってはいけない脳震盪「脳細胞には痛覚がない」 選手生命を奪う頭部外傷の恐ろしさ

スポーツドクターとして、これまで数多くの選手をサポートしてきた二重作拓也(ふたえさく・たくや)医師。スポーツの現場で発生する脳震盪(のうしんとう)を含む頭部外傷が軽視されがちな現状について警鐘を鳴らし、選手の命を守るために指導者と保護者に求められる行動を説く。(取材・文=はたけあゆみ)

格闘技ドクター二重作拓也氏
格闘技ドクター二重作拓也氏

格闘技ドクター二重作拓也氏が語る、本当の「強さ」とは

 スポーツドクターとして、これまで数多くの選手をサポートしてきた二重作拓也(ふたえさく・たくや)医師。スポーツの現場で発生する脳震盪(のうしんとう)を含む頭部外傷が軽視されがちな現状について警鐘を鳴らし、選手の命を守るために指導者と保護者に求められる行動を説く。(取材・文=はたけあゆみ)

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 最近、スポーツの現場で頭部外傷の危険性が注目されるようになってきました。頭部外傷のひとつである脳震盪(※1)は、頭部に衝撃を受けた際、一時的に痛みを感じたり朦朧としたり、意識を失ったりする状態をいいます。

 スポーツで発生する脳震盪というと、ボクシングや空手など頭部に打撃を加えポイントを取る格闘技を連想すると思いますが、実はそれだけではありません。どんな競技でも脳震盪は起きています。例えば身近な競技でもある野球では、デッドボールがあります。ヘルメットをつけていても、頭にボールが当たる衝撃は相当なものです。本気で身体をぶつけあうアメリカンフットボールも、脳震盪が起こりやすい競技と言えるでしょう。

 2014年にはフィギュアスケートの羽生結弦選手が公式練習中に他の選手と激突、頭部を強打して、しばらく動けなくなるという事故がありました。その後にフリー演技に出場したわけですが、ファンの間では称賛の声があった一方で、医療の専門家やアスリートたちは危険性を指摘していました。結果として大事に至らずよかったものの、スポーツにおける頭部外傷や脳震盪について、関心が高まる契機となった出来事でした。コンタクトスポーツ以外でも脳震盪は起こりうるのです。

 コンタクトスポーツや格闘技においては、脳震盪は「よくあること」だと考えられています。スポーツの現場で頭を打っても、すぐに意識が戻り本人が「大丈夫」と表明すれば、あるいは監督や指導者が「できる」と言えば、練習や試合が継続されてしまうケースもあります。例えば直接打撃制の空手の試合においては、顔面に上段膝蹴りをくらって倒れても、すぐ立ち上がれば一本負けにはなりません。そうした状況では選手は「大丈夫、まだ戦える」と思うのは当然ですし、周囲も「まだ逆転できる」「取り返せ」となりがちです。

 逆に脳震盪がほとんど見られない競技では、指導者や保護者はどうすればいいのか対処の方法を知らないというケースが多いのです。子どもが参加する野球チームの試合や練習中に頭にボールが当たって本人が倒れたとして、すぐに意識を取り戻せば、周囲はひとまず安心するわけですが、周囲の安心=スポーツの継続とはなりません。バレーボールなども格闘技などに比べて脳震盪は少ないですが、たまたま着地に失敗して頭を打つケース、バスケットボールやサッカーでもボールに意識が集中するあまり、選手同士がぶつかるケースがあります。

 脳震盪が起きた際のガイドラインは、各競技団体にあったとしても、競技やチームによって脳震盪の危険性のとらえ方自体に、濃淡があるのが現状です。

 スポーツの現場で「頭を打って倒れた」イコール「脳震盪」とはいえません。脳震盪は医療機関でさまざまな検査を行い、脳内に出血や骨折などの画像上の異常がないことが分かった後の診断名に過ぎないのです。頭を打って硬膜下血腫(こうまくかけっしゅ)が起きていても、脳挫傷(のうざしょう)が起きていても、外から見える現象としては「頭を打って倒れた」というふうに見えてしまうからです。

 頭部に衝撃を受けた後は、頭蓋内で出血しているかどうかは医療機関で検査してみないと分かりません。すぐに意識が回復したから、本人が大丈夫だと言っているから、様子に変わりがないからといって「脳震盪」とは判断できないのです。指導者の方には、選手が頭を打ったときに「脳震盪」と決めつけるのではなく、出血その他を含む「頭部外傷」全般として広く捉えた上で、確定診断を得るまでは、あらゆる可能性を想定していただきたいと思います。

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