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「育成の創価」を大学駅伝強豪校も警戒 「箱根で戦える選手」に育て上げる榎木和貴監督の信念

監督就任前は「チームが迷走していた」

――就任5年目を迎えて、何か新しいことへの取り組みはあったのでしょうか。

「今年からコーチに築舘(陽介)が加わりました。彼は、私が監督に就任した時のキャプテンだったんです。箱根に行けなかった時代を知っていますし、私が就任してからチームの練習や選手の姿勢が劇的に変わり、予選会を突破、シードを獲得してきた経験をしているので、そういう時代があったことを後輩たちに伝えてくれます。先輩たちが築き上げてきたものを数年で終わらせるのではなく、継承していくというのがうちのチームのスタイルですが、築舘が入ることで余計なものをそぎ落とし、ベースをキープしつつ、新しいものも入れていくというサイクルがようやく5年で固まりつつあるかなと思います」

――当初、目標設定、練習の方法などで学生との衝突はなかったのですか。

「私が、就任する前は、チームが迷走していました。スタッフ間の連携が上手くいっていなくて、誰を信じてついていけばいいのか、方向性が見出せない状況だというのを聞いていたので、正直、選手はかわいそうだなと思っていました。

 私が監督に就任して最初に感じたのは、箱根に行きたい、箱根で戦いたいという思いの強い選手が多かったということ。まずは箱根に行くために必要なことを、実体験を交えて話し、選手に理解してもらいました。その上で強化を進めていったので、やる気が見えない学生には怒りましたけど、衝突することはなかったですね」

 創価大は1、2年時、練習によって培われたものが上級生になって開花し、箱根駅伝で快走するパターンが多く、それが「育成の創価」と言われる所以でもあった。だが、最近は1年生の出走も増えてきており、学年の枠に止まらない活躍が目立ち始めている。

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榎木 和貴

創価大 陸上競技部 駅伝部監督 
1974年6月7日生まれ、宮崎県出身。現役時代は箱根駅伝で史上7人目となる4年連続区間賞獲得など、中央大の主力として活躍。3年時の96年大会では4区を走り、32年ぶり14回目の総合優勝に貢献した。卒業後は旭化成に進み、2000年の別府大分毎日マラソンでは2時間10分44秒で優勝。その後は負傷にも苦しみながら沖電気、トヨタ紡織で指導者としての実績も積み上げると、19年に創価大駅伝部の監督に就任した。21年の箱根駅伝で往路優勝、総合2位とチームを過去最高成績へと押し上げる。今季も出雲駅伝2位、全日本大学駅伝6位と上位争いを演じている。

佐藤 俊

1963年生まれ。青山学院大学経営学部を卒業後、出版社勤務を経て1993年にフリーランスとして独立。W杯や五輪を現地取材するなどサッカーを中心に追いながら、大学駅伝などの陸上競技や卓球、伝統芸能まで幅広く執筆する。『箱根0区を駆ける者たち』(幻冬舎)、『学ぶ人 宮本恒靖』(文藝春秋)、『越境フットボーラー』(角川書店)、『箱根奪取』(集英社)など著書多数。2019年からは自ら本格的にマラソンを始め、記録更新を追い求めている。

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