現役時代の実績で「監督が務まる時代ではない」 欧州事情を知る日本人「サッカーの形が変わった」
サッカーの母国であるイングランドは、隆盛を極めるプレミアリーグを筆頭に長い歴史によって築かれた重厚な文化や伝統があり、いつの時代も圧倒的な権威を保っている。そんな世界最高峰の舞台に乗り込み、アジア人として初めて2018年にイングランドサッカー協会(FA) 及び欧州サッカー連盟(UEFA)公認プロライセンスを取得したのが高野剛氏だ。インタビュー最終回は、現在在籍するシント=トロイデンでの育成の仕事について話を聞きながら、監督に求められる資質について持論を展開した。(取材・文=加部 究)
高野剛「世界最難関ライセンスを持つ日本人指導者」第5回、育成責任者としてピッチ内外をケア
サッカーの母国であるイングランドは、隆盛を極めるプレミアリーグを筆頭に長い歴史によって築かれた重厚な文化や伝統があり、いつの時代も圧倒的な権威を保っている。そんな世界最高峰の舞台に乗り込み、アジア人として初めて2018年にイングランドサッカー協会(FA) 及び欧州サッカー連盟(UEFA)公認プロライセンスを取得したのが高野剛氏だ。インタビュー最終回は、現在在籍するシント=トロイデンでの育成の仕事について話を聞きながら、監督に求められる資質について持論を展開した。(取材・文=加部 究)
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現在ベルギー1部のシント=トロイデンに籍を置く高野剛には、Head of Football strategy & developmentおよびManaging director of youthという長い肩書きがついている。
「具体的には、下はU7からトップチームに定着できていない、プロ契約をして3年目くらいまでの選手たちの育成の責務を担うのが主な仕事で、そこに携わる指導者を含めたマネージメントを任されています」
育成の責任者なので、当然ピッチの内外を問わず仕事の内容は多岐に渡る。
「このクラブには、優れた選手を育てるだけではなく、リスペクトされる人材を、という文化があります。選手たちが通う学校の先生方とも密に連携を取りながら、立ち居振る舞い等の目標設定も行い、その都度面談をしていきます。まず担当コーチが先生と話し合い、難題に直面しているようならオペレーション・マネージャーが介入し、それでも改善が難しいようなら私が最終決定を下すことになります。プレーをさせないという選択肢はありませんが、改善のゴールを定めて、到達できるまではプレー時間を削減する等の措置を取ります」
そこは身体能力などに長けた素材の確保を優先する一部の強豪クラブとは、一線を画すそうである。
「あるクラブのU18に在籍するフランス語圏のストライカーなどは、試合の1時間前に集合をかけても、平気で遅刻してくる。注意をされたら『キックオフに間に合ってシュートを決めればいいんだろ』というスタンスで、むしろそういう指導者が教えられない何かを持っているような選手たちが、自分の責任で戦い生き残っていく。それも真実です」