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「“ちょうどいい距離”って何?」 ラグビー元日本代表が伝えたい話し合いが促す成長

「受け手の周波数も考えながら、自分の個性を失わないでコミュニケーションが取れるように」

話し合いと実践を繰り返しながら、子どもたちの成長を促していく【写真:荒川祐史】
話し合いと実践を繰り返しながら、子どもたちの成長を促していく【写真:荒川祐史】

 実は「準備に対する時間」の話は、社会人にも当てはまる。仕事の期日が迫る中、たとえ正しい選択をしても時間が掛かって間に合わなければ、評価はされない。BUラグビーアカデミーでは、将来ラグビーを続けなくても、幅広く社会で活躍できる大人に育てることを目指している。社会生活を送る上で、人と人とのコミュニケーションは欠かせないものだ。静岡県教育委員も務める小野澤氏は、子供たちにラグビーのようなチームスポーツを経験することを勧めたいという。

「チームスポーツを通じて『他の人はこういうことを考えるんだ』と感じたり、『はっきりと答えは見つからないけど、とりあえずこれを続けてみよう』といった話し合いをしてもらいたいです。話し合って、意見をまとめて、それを試して、成功もするけど、時には失敗する。小さな挫折を繰り返しながら『みんなで解決するのって楽しいね』というところを学べる教材。そこにスポーツの価値があるんじゃないかと思うんです」

 話し合いと実践を繰り返す中で、子供たちは伝えることの難しさや楽しさを学んでいく。コミュニケーションの理解を深めた時、そこにまた新しい成長も期待できる。

「コミュニケーション=伝えること、と簡単に言うけど、日本語という共通言語を使っても伝わらないことはすごく多い。例えば『赤』と言っても、僕の考える赤と隣の人の考える赤は違うかもしれない。だから、グループトークのような話し合いを重ねるうちに『この人はこういう考えをする』『この人はこういう反応をする』という自他理解が深まって、伝わりやすくなるんです。伝える相手は感覚的な表現がハマる人なのか、数値での表現がハマる人なのか、ジェスチャーを入れた方がいいか、声のトーンは強い方がいいか。受け手の周波数も考えながら、自分の個性を失わないでコミュニケーションが取れるようになると、ちょっと人に優しくなれるんじゃないかなと。特にラグビーって言語としての情報伝達の割合が高いスポーツなので、伝える相手のことを考えるんですよ。だから、トップチームでプレーしている選手は、みんな優しいです(笑)」

 3人のレジェンドたちが世界の強豪と渡り歩きながら得た経験や学びに触れながら、ラグビーを楽しむ子供たち。「単純に僕はこれから先、どれだけ面白いラグビーを見せてくれるのか楽しみですね」と目を細める小野澤氏も驚くような、スケールの大きな人間に育つことだろう。

(THE ANSWER編集部・佐藤 直子 / Naoko Sato)

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