「“ちょうどいい距離”って何?」 ラグビー元日本代表が伝えたい話し合いが促す成長
グループトークから生まれた「“ちょうどいい距離”って何だろう?」
あるクラスでは、グループトークが興味深い方向に発展していったという。子供たちが真剣に話し合ったのは「“ちょうどいい距離”って何だろう?」ということだった。
「子供たちから『ちょうどいい距離にいるといいんだよ』という声が上がったんです。そこで『じゃあ“ちょうどいい距離”って何?』って聞いたんです。そうしたら『だいたい走ったら相手に届く距離』という声があったので『分かった。でも、それは今の話で、相手がもっと遠くにいたらどうなる?』って聞くと『変わる』と。そこで、実際にグラウンドで子供たちが考える”ちょうどいい距離”に立たせてみた。状況によって距離は変わるわけですけど、『それが正解。ちょうどいい距離って一つの答えはないから、その瞬間の相手との関係性を知って判断するんだよ』と伝えました」
中学生のクラスでは、グラウンドを使う方向を変えることで生まれた問題について話し合われた。長方形のグラウンドを、まず横長に使ってゲームをする。進む距離は短いがディフェスラインやオフェンスラインの幅は長くなる。次にグラウンドを縦長に使うと、進む距離は長くなるがラインの幅が短く揃いやすい。すると、ディフェンスラインからのプレッシャーが厳しくなり、オフェンス側のミスが増えたという。
「グループトークで、攻撃側のノックオンやハンドリングエラーが増えたのはなぜか、という話になった時、ディフェンスからのプレッシャーが増えたという意見が出たんです。ラインの幅が変わるだけで、プレッシャーが強くなってミスが起きやすくなる。それを防ぐためには、子供たちは『いい準備をすればいい』と考えた。でも、ここで『準備をする時間って考えたことある?』って聞いてみたんです。そうしたら『ないです』と。
準備のオプションがどこにあるか考えた時、種類に目がいきがちなんですが、実はこの場合、ラインの幅が短くなってディフェンスラインが早く整ったから、攻撃側は準備する時間が足りなかった。準備の選択肢が悪かったわけではない。だから、今度は選択する時間、準備をする時間も考えてみようね、と話しました。でも、これはかなり高度な話で、僕も30歳くらいになって考え始めたこと。中学生も『分かるけど、難しい』って言っていました(笑)」