社会人に必要なことは何か ラグビー元代表選手2人と学校経営者が考える「社会性」
「『教育』という言葉を『学習』に変えるべき」
――教育現場でこういう取り組みがあるのはいいことですね。
小野澤「僕は今、静岡県の教育委員もしていますが、そもそも『教育』という言葉を『学習』に変えるべきだと思うんです。『教える』『育む』というのは教師目線で、『学ぶ』『習う』の方が学習者中心の見方になるんじゃないかと」
山口「うちも『勉強』とは言わず『学ぶ』に変えました。自分が知りたいと思うことを自分で調べて学ぶ、ということにしたいなと。この前、たくさんの落とし物を処分しようとした時、女の子3人が『もったいないから寄付しよう』と言い始めたんです。3人がいろいろ調べたら、海外に寄付する場合は受け取る側に税金がかかることもある。そこで国内の施設に送ることにしたんですが、洗濯をしなければいけない。3人が保護者にお手紙を書いてクリーニング代の寄付を募り、運動会で募金箱を持って立っていたら13万円も集まったんですよ。さらに、寄付できそうな古着を持ってきた方もいたので、今度はそれをフリーマーケットで売った。最終的にはそのお金を、元々送りたかったアフリカの国に現金で送ったんです。これが『学び』なんですよね」
菊谷「完全に『学び』ですね。そうやって子供たちが学ぼうと、いろいろなことを考えていると、僕ら大人も質問された時に答えられるように学ぶ。この相乗効果っていいなと思います」
山口「子供に聞かれても分からないことはたくさんある。そこで大人が『分からない』と言えるかどうかが分かれ道。分からなかったら、一緒に調べて学べばいいわけです。大人だから、教師だから何でも知っている、じゃなくて『知らない』『分からない』と子供に言えるか。もし子供が『じゃ、教えてあげる』となったら、その経験は子供にとって大きな宝物になると思います。知ったかぶりをすると子供には分かりますから。大人と子供がともに学びあう世の中になるといいですね」
(終わり)
◇「LCA国際小学校」とは?
2008年に文科省に認可された株式会社が経営する私立校。担任を外国人教師が務めるなど、学校生活の大半を英語で過ごす独自のアクティブイマージョン教育を取り入れている。1クラス約20人の少人数制。サマーキャンプ、音楽鑑賞など、自然、芸術の本物と触れ合う機会を積極的に持っている。姉妹校のオーストラリア・ヒルズ学園への短期留学制度もある。校長・西村昭比古。神奈川県相模原市緑区橋本台3-7-1。
<山口 紀生>
1978年、横浜国大教育学部卒、相模原市立小で教鞭を執る。85年に退職し、私塾「LCA」を設立。英会話スクール、幼児教室を開設し、自らも指導にあたる。01年に株式会社エル・シー・エー設立。2000年、「LCAインターナショナルプリスクール」開設。05年学校の教科を英語で指導する「LCAインターナショナルスクール小学部」開設。08年に文科省の認可を受け、「LCA国際小学校」に。日本初の株式会社小学校校長に就任。東京都中央区国際教育推進検討委員会副委員長などを歴任し、16年にLCA国際学園に名称変更。学園長に就任し、社名を株式会社エデューレエルシーエーに変更した。著書「どうしてこんなにできる子ばかり」「親子作文ワーク」(オクムラ書店)、「子育ての詩」「つれづれそう」(LCA出版部)、「親子でつくる見たこと作文」(エデューレコミュニケーションズ)。
<小野澤 宏時>
1978年3月29日、静岡県生まれ。静岡聖光学院高から中央大に進み、トップリーグではサントリーサンゴリアス、キヤノンイーグルスでプレーした。ポジションはウイング。代表デビューは2001年6月17日のウエールズ戦。ワールドカップには2003年のオーストラリア大会、2007年のフランス大会、2011年のニュージーランド大会に出場。日本代表キャップ数「81」は歴代2位。現在は「ブリングアップラグビーアカデミー」を主宰するほか、女子7人制ラグビークラブ「アザレアセブン」監督、J1「清水エスパルス」アスレティックアドバイザー、静岡県教育委員など幅広く活動している。
<菊谷 崇>
1980年2月24日、奈良県生まれ。御所工業高から大阪体育大に進み、トップリーグのトヨタ自動車ヴェルブリッツでプレー。イングランドのラグビーチーム、サラセンズでプレーした後、キヤノンイーグルスに移籍した。ポジションはNO8、フランカー。15人制と7人制ともに日本代表経験を持ち、15人制代表デビューは2005年11月5日のスペイン戦。2008年より主将を務め、2011年ワールドカップでは主将としてチームを率いた。日本代表キャップ数「68」。2018年に引退。現在は「ブリングアップラグビーアカデミー」を主宰するほか、ラグビー日本代表のU-20代表、高校代表などユース世代の代表コーチも務める。
(THE ANSWER編集部・佐藤 直子 / Naoko Sato)