「我がまま」を許し「ワガママ」は許さない 日本代表MFを育てた名伯楽の信念
「そんなことはペレでもしない!」と森島を一喝
大河FCが主催する「リベリーノカップ」では、8人制で前後半だけではなく、3本戦うルールが採用されている。前後半を全員入れ替え、3本目はシャッフルしたチームを出すのだ。
「私の一番の願いは、一緒にやってきた子供たちが、ずっとサッカーを大好きでいてくれることです。途中で燃え尽きてしまったり、サッカーなんかやらなければ良かったと思う子が出てきたら、こんなに辛いことはない。私は自分の幸せのためにサッカーをやってきました。自分が幸せになることで、みんなが幸せになる。それが楽しいんです」
ただし、“我がまま”に自己表現することを奨励する浜本だが、ワガママは絶対に許さなかった。
長く日本代表で活躍した森島寛晃が、自己中心的なプレーをして文句ばかりを言っていた時期があった。するとサッカーノートには「そんなことはペレでもしない!」と赤ペンで注意をされた。
また日本代表で10番を背負った木村和司も、小学生時代に一度だけ練習の途中で「帰れ!」と怒鳴られたことがあった。
「5年生が中心のチームで、和司は6年生だった。リーダーとして牽引して欲しかったのに、苦しいことを避けて偉そうにしていたんですね」(浜本)
チャレンジは積極的に促す。しかし規律は守る。それが浜本の信念なのだ。
「先生は公衆の場で迷惑な行為があれば、相手がその筋の人でも平気で怒鳴り飛ばす。だから危なくてしようがない」
木村は、そう言って苦笑した。
(文中敬称略)
【了】
加部究●文 text by Kiwamu Kabe