変わろう、野球 筒香嘉智の言葉「子どもは大人の顔色を窺いながら野球をしている」
ドミニカ共和国で触れた子ども達の無邪気な姿、大人の様子を窺うこともなく…
休養日には、現地の子ども達の練習風景を見学。数多くのメジャーリーガーを輩出する土地だけに、さぞや厳しい指導が行われているのかと思いきや、コーチは子ども達を褒めこそすれ、怒鳴ったり罵倒したりすることはなかった。
「日本では、監督やコーチが子ども達を怒るのは当たり前。教えたことをやらなかったり失敗したりすれば怒鳴り散らすから、子どもはみんな大人の顔色を窺いながら野球をしている。だから、野球教室に行っても、自分から前に出てくる子って少ないんですよ。それが、ドミニカでは正反対。子ども達が失敗しても、監督やコーチは『また次頑張ろう』って声を掛けるし、いい点を見つけて褒めている。それはみんな『次こそホームラン打ったろ』って、やる気出しますよね」
初めて出会う日本人にも怖じ気づくことなく「一緒に野球をしよう」「キャッチボールしよう」と人懐こく近寄ってくるドミニカの子ども達。その姿に触れた筒香は「日本の子ども達が本来持つ姿も、これなんじゃないか?」と思ったという。そして、現地で指導者の言葉を聞き、根本的な違いに気が付いた。
「現地の指導者の方は、今、勝つことは重要視していないんです。大事なのは、今教えている子ども達の中から、将来メジャーで活躍する選手が何人出るか。だから、子ども達の可能性を潰さないためにも、得点チャンスで三振してもフルスイングだったら『よくやった。いいスイングだった。次は当たるように工夫しよう』って褒めるんです。肘が痛い、膝が痛いとなれば、無理をさせずに休ませる。日本の少年野球を見ると、今、勝つことにこだわり過ぎて、子ども達の将来が二の次になってしまっている気がするんです。肘の痛みを押してまで、今日の試合に勝つことが大切なのか。好きだった野球を嫌いになるまで練習させる必要があるのか。子どもにとって本当に大切なのは、今日の1勝よりも、将来プロ野球選手になるという夢を捨てないこと、野球を好きであり続けることだと思うんです」