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「日本代表監督になる」 破天荒な25歳校長の切実な思い「怒鳴る指導断ち切りたい」

現役時代はドイツのユルディンゲンと契約【写真:本人提供】
現役時代はドイツのユルディンゲンと契約【写真:本人提供】

「シュートを外して怒鳴るのは、素人にもできます」

 しかし、現役生活にピリオドを打った途端に、新しい目標が浮かび上がる。

「史上最年少でS級ライセンスを取り、日本代表監督になる」

 ただし破天荒な夢は決して浮ついたものではなく、根底には「日本サッカーの育成現場を変えたい」という切実な思いがあった。

「日本サッカーの指導を変えていきたいんです。今、様々な現場を見ると、指導者は依然としてミスした選手たちを怒鳴っている。パスミス、トラップミス、シュートミス……。でもシュートを外して怒鳴るのは、素人にもできます。指導者が果たすべき役割は、なぜ外れたかの説明であり、どうしたら次は外さないか解決策の提示です」

 引退してからも上船は、貪欲に学び、指導や技術の向上を図ってきた。先日もキックの指導に定評のあるコーチを訪ね、ふかさないシュートを体得している。

「このフォームで蹴れば“ふかさない”のではなく、むしろ“ふかせない”。先日も子供たちにキックを改善するクリニックをやったら大喜びだったそうです」

 日本サッカーが変わるためには、まず大人が変わる必要があると考える。

「怒鳴るコーチから指導を受けた選手は、自分が指導者になるとそれを真似します。だからそれを断ち切り、常に指導者は学び続け、論理的に伝えていくべきだということを浸透させたい。そのためには、自分が日本代表監督になって発信するのが最も効果的だと思うんです」

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加部 究

1958年生まれ。大学卒業後、スポーツ新聞社に勤めるが86年メキシコW杯を観戦するために3年で退社。その後フリーランスのスポーツライターに転身し、W杯は7回現地取材した。育成年代にも造詣が深く、多くの指導者と親交が深い。指導者、選手ら約150人にロングインタビューを実施。長男は元Jリーガーの加部未蘭。最近、選手主体のボトムアップ方式で部活に取り組む堀越高校サッカー部のノンフィクション『毎日の部活が高校生活一番の宝物』(竹書房)を上梓。『日本サッカー戦記~青銅の時代から新世紀へ』『サッカー通訳戦記』『それでも「美談」になる高校サッカーの非常識』(いずれもカンゼン)、『大和魂のモダンサッカー』『サッカー移民』(ともに双葉社)、『祝祭』(小学館文庫)など著書多数。

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