谷晃生、食野亮太郎らの才能開花 G大阪ユース熱血監督が語る、若手“操縦術”の極意
本気の選手が目に涙を浮かべると「もらい泣きしそうになる」
――選手は最初からついてきたんですか?
「最初は(食野)亮太郎も(中村)敬斗も(福田)湧矢も、みんな面食らっていたと思います。でもいかに本気度を伝えるか。『本気やぞ』って、それしかない。選手を100%ファイトさせないといけないから」
――選手が“らしさ”を出せるようになりました。
「敬斗はプロ2年目でした。デビューシーズンは埼スタ(埼玉スタジアム)で凄いゴールを決めて話題になって。でもプロの水に慣れてウイーク(ポイント)を指摘されて、自分がU-23の監督になった時は、キャンプで(失格の)烙印を押されて戻ってきたところでした。まず、『パスはしなくていい、全部行け、全部仕掛けろ』って話して。敬斗は『え、ドリブルしていいんですか?』って目をキラキラさせて。『点を取って怒る監督いないぞ』って」
――監督次第で、それだけ変化があるのがユース年代ですね。
「選手がどう思っているか、すごく観察しますね。どういう感情でグラウンドに立っているのか、どういう感情で普段過ごしているのか。常に声をかけるのではなく、泳がす時もあるし、触るタイミングは大事です。とにかく観察して。そうしていると家に帰ったらくたくたで、ソファでグダってなっています(笑)。
あと、これは監督の習性でしょうけど、レストランやコンビニでも、この店員さんは今どんな心境でどんな感情か、とか気付くと観察しています。これは病気ですね(笑)」
――その熱が選手に伝わるんですね。
「選手と話していると、彼らは本気なので純粋な目に涙を浮かべることがあって。それを見ていると、もらい泣きしそうになるんです。『感情をコントロールしろ』って選手には言っているんですけどね(笑)」
――谷選手も「森下監督に『感情をコントロールできるようになったら、絶対にいいパフォーマンスができる』って言われてきました」と感謝の言葉を口にしています。
「晃生(谷)を指導できたのは幸せでした。最初はユースが半分のチームだったので、本人も“なんでこんなところで”って、上手くいかないと脛あてを投げ捨てたり、ポストを蹴ったり。でも“来た、来た!”と楽しい感じでした(笑)。若い選手の負けん気ってすごく大事で。彼はU-20ワールドカップが目標でしたが、肩の脱臼で棒に振ってしまって。復帰後は『年末の東京五輪立ち上げに招集されるように』と目標を立てたんです。それで選ばれてから、出場した五輪でも正GKとして活躍し、今では代表ですからね。選手に出会わせてもらっているなと思います」