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世界の一流は「利き足で仕掛ける」 ブラジルの元プロ選手が抱く日本流両足指導の疑問

左右の足の間にボールを置く「トッププレーヤーは絶対にいない」

 筆者も少年チームの指導経験があるが、子どもたちが初めてリフティングに挑戦する時は、利き足のみでやろうとする。

「それが自然なんです。片足リフティングは、ステップを踏まないと続かない。でも両足なら、ステップも踏まずに身体も開いたままでできます。もちろん実戦では、両足を使う方が楽な局面もあります。両方から相手が寄せて来たら、ダブルタッチをすれば切り抜けやすい。でもウチでは、ステップの要らないダブルタッチはやらせません。利き足のアウト、インを駆使してキープするように指導しています。

世界の優れた選手たちは、みんな利き足側でボールを持って仕掛けます。相手に奪われないところにボールを置き、奪われない持ち方、運び方をする。よく左右の足の間にボールを置くように教える指導者がいますが、そんなトッププレーヤーは絶対にいません」

 日本の現場では、まるで両足を同じように使いこなすことが、成功の条件であるかのように指導されている。しかし檜垣がブラジルで見てきた実態は真逆だった。

「だから利き足の正しい使い方は凄く注意していきます。野球の投手だって正しいフォームで投げなければ伸びていかないでしょう」

 利き足のみを使う指導に不安を持つ親御さんもいる。だが、檜垣は確信を込めて言う。

「『いつから反対の足を練習したらいいんですか?』と聞かれることもあります。でもそれはプロになって必要だったら、で十分だと思います」

利き足に絞った練習に切り替えてから開眼し、プロ契約に漕ぎ着けた成功体験の持ち主ならではの言葉だった。(文中敬称略)

(加部 究 / Kiwamu Kabe)

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加部 究

1958年生まれ。大学卒業後、スポーツ新聞社に勤めるが86年メキシコW杯を観戦するために3年で退社。その後フリーランスのスポーツライターに転身し、W杯は7回現地取材した。育成年代にも造詣が深く、多くの指導者と親交が深い。指導者、選手ら約150人にロングインタビューを実施。長男は元Jリーガーの加部未蘭。最近、選手主体のボトムアップ方式で部活に取り組む堀越高校サッカー部のノンフィクション『毎日の部活が高校生活一番の宝物』(竹書房)を上梓。『日本サッカー戦記~青銅の時代から新世紀へ』『サッカー通訳戦記』『それでも「美談」になる高校サッカーの非常識』(いずれもカンゼン)、『大和魂のモダンサッカー』『サッカー移民』(ともに双葉社)、『祝祭』(小学館文庫)など著書多数。

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