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堀越高、29年ぶり選手権出場の舞台裏 コロナ禍の成長生んだ“堀越ゲームモデル”とは

決勝の終了間際に追いつかれるも「選手たちは僕以上に落ち着いていた」

 ゲームモデルが全体で共有されると、部活動が想像以上に整理されスムーズに進むようになった。

「僕以上に生徒たちが、これを共有しよう、みんなで合わせよう、と発信し続けてくれた。コロナ禍で活動期間が制限されるなかでも、選手たちの急速な成長を実感できました。今まで組織論や精神論には自信があったんですが、サッカーに関してはもう一歩、二歩足りない感じだったので、僕らスタッフも選手たちに良いものを与えてもらったと思います」

 東京都大会Bブロック決勝では、対戦相手の大成が敢えて主力を温存し、極端に守備的な戦いを選択してきた。それだけでも今年の堀越が、本命視されてきたことが窺えた。

「大成さんも準決勝までは真っ向勝負をしてきたんです。でも決勝のスタメンを見て、それまでとは少し立ち位置を変え、堀越に疲れの出る時間帯に主力を投入してくるんだろうな、という感じでした」(佐藤)

 序盤から大成は、中央を閉めることを意識し、低めのブロックを形成。堀越に主導権を握られるのを想定したうえで、GKもDFも後方からのロングボールを多用した。しかし前半12分、堀越は逆に空いたサイドのスペースを流動的に活用し突破口を切り拓く。3-4-3の堀越は、シャドー、ウイング、ボランチの三角形が連動。大成の守備網を広げて混乱を誘うと、最後は中央でフリーになった尾崎岳人がプッシュした。

 だが後半に勝負を賭けた大成も、終了2分前にCKから同点。高校生にとって、終始ボールを支配しながら土壇場で追いつかれる展開は、大きなダメージが予想された。

「あの流れだと、もう一発入れられて終わるか、延長やPK戦にもつれ込むものです。でも選手たちは僕以上に落ち着いていたようです。『もう一発食らわなければ、PK戦も含めて勝機はある』『相手は前がかりに来ているから、逆にチャンスあるぞ』と声をかけあっていたそうです。自分たちの残りのパワーと、相手がやろうとしているパワーのバランスを見極めて、何をすれば勝利を持ってこられるか。冷静に考えていたみたいですね」(佐藤)

 追いつかれてから4分後、堀越に決勝ゴールが生まれる。中央のポッカリと空いたスペースに入り込んだ日野翔太が、山口輝星の横パスを呼び込み、ダイレクトで冷静に流し込んだ。(文中敬称略)

(加部 究 / Kiwamu Kabe)

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加部 究

1958年生まれ。大学卒業後、スポーツ新聞社に勤めるが86年メキシコW杯を観戦するために3年で退社。その後フリーランスのスポーツライターに転身し、W杯は7回現地取材した。育成年代にも造詣が深く、多くの指導者と親交が深い。指導者、選手ら約150人にロングインタビューを実施。長男は元Jリーガーの加部未蘭。最近、選手主体のボトムアップ方式で部活に取り組む堀越高校サッカー部のノンフィクション『毎日の部活が高校生活一番の宝物』(竹書房)を上梓。『日本サッカー戦記~青銅の時代から新世紀へ』『サッカー通訳戦記』『それでも「美談」になる高校サッカーの非常識』(いずれもカンゼン)、『大和魂のモダンサッカー』『サッカー移民』(ともに双葉社)、『祝祭』(小学館文庫)など著書多数。

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