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堀越高、29年ぶり選手権出場の舞台裏 コロナ禍の成長生んだ“堀越ゲームモデル”とは

全国高校サッカー選手権で、29年ぶりに堀越が東京都代表を勝ち取った。5試合通算で34ゴール、3失点。何より常に主導権を握り、選手たちが楽しいと感じるスタイルを貫いての勝利だった。

29年ぶりに東京都代表を勝ち取った堀越高校【写真:堀越高校提供】
29年ぶりに東京都代表を勝ち取った堀越高校【写真:堀越高校提供】

【堀越高校サッカー部“ボトムアップ”革命|第1回】東京都予選5試合で34ゴール3失点、選手自らが“楽しい”スタイルを貫く

 全国高校サッカー選手権で、29年ぶりに堀越が東京都代表を勝ち取った。5試合通算で34ゴール、3失点。何より常に主導権を握り、選手たちが楽しいと感じるスタイルを貫いての勝利だった。

 チームを率いる、というより、選手と一緒にチームを作り上げてきた佐藤実監督が語る。

「欧州、Jリーグも含めて、良い映像をたくさん見てきた世代の選手たちです。もちろんトレンドは変化するわけですが、大筋でみんなが見てきて、やりたいサッカーは共通している。堀越で最も大事にしているのは、プレーの優先順位です。いたずらに繋ぐばかりではなく、しっかり蹴る時は蹴る。ただ優先順位を選んだうえで、誰もが表現したいと思うサッカーに近づけてあげようと、大人が理解し補佐してきました」

 佐藤は8年前に、堀越にボトムアップ理論を導入した。上意下達ではなく、選手たちの主体性を尊重し、彼らが自ら考えて構築していく部活を目指した。成果はすぐに表れた。選手主導に移行して3年目、4年目には連続して東京都予選の決勝に進出。だが全国大会出場まで、あと一歩まで迫ってから足踏み状態が続いた。

「グラウンドに出てボールを蹴りながら、サッカーが上手くなるために学び合う。そんな充実して楽しい部活ができている手応えはありました。当然楽しいだけではなく、チームとして選手としてやるべきことをこなすことが大前提ですが、ここでは罰走、球拾い、長時間の素走り、延々と筋トレなどということはありません。ただ良いことをやっているというだけで終わらないようにしないとね、とは常々選手たちにも話してきました」

 転機は2020年が明け、新チームのスタートとともに訪れた。佐藤は以前からスタッフとの話し合いを重ね、温めてきたプランを提示。選手たちも賛同する形で、それからはスタッフと選手たちが意見交換を進めながら精度を高めてきた。

「堀越なりのゲームモデルを作り、目指すサッカーを構築するための柱になるもの、方法論を共有しました。以前は各チームにリーダーがいて、そのリーダーの色が反映されるので、チームとして伝統のスタイルがなかった。でも毎年あまりコロコロ変わると、選手たちが戸惑います。やはり基準になるものがあり、それを毎年ブラッシュアップしていくほうが、選手たちにも分かりやすいだろうと考えたんです」

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加部 究

1958年生まれ。大学卒業後、スポーツ新聞社に勤めるが86年メキシコW杯を観戦するために3年で退社。その後フリーランスのスポーツライターに転身し、W杯は7回現地取材した。育成年代にも造詣が深く、多くの指導者と親交が深い。指導者、選手ら約150人にロングインタビューを実施。長男は元Jリーガーの加部未蘭。最近、選手主体のボトムアップ方式で部活に取り組む堀越高校サッカー部のノンフィクション『毎日の部活が高校生活一番の宝物』(竹書房)を上梓。『日本サッカー戦記~青銅の時代から新世紀へ』『サッカー通訳戦記』『それでも「美談」になる高校サッカーの非常識』(いずれもカンゼン)、『大和魂のモダンサッカー』『サッカー移民』(ともに双葉社)、『祝祭』(小学館文庫)など著書多数。

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