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サッカー名門校“中退”から英国留学へ 親友の1ゴールが切り拓いた指導者への道

心理学、フィジカル、スカウト…英国での4年間で様々な資格を取得

 入学当初は、英国での大学生活に戸惑った。1日に授業が2~3時間しかなく、それも学生が黙って講義を聞くという受動的なものは、ほとんどなかった。教授は大量の課題を出し、学生たちは自由に情報収集に動き、意見を交換するのが授業だった。ただし教授の中には、イングランド代表の元サイエンスコーチがいたり、ジェイドン・サンチョ(現ドルトムント)やギャレス・ベイル(現レアル・マドリード)の指導に携わった経験を持つ錚々たる顔ぶれが揃っていたので、知識を深める術は鏤められていた。

 それに気づいてからは、積極的に会いたい人に連絡を取り、クラブのトレーニングを視察し、カンファレンスにも出席しながら論文を読み漁った。

「学生で勉強中と言えば、どんな指導者もオープンに話してくれました」

 こうして4年間で、様々な資格や実績が積み上げられた。日本人では初めてフィンランドで7カ月間に及ぶエコノメソッドのマスターコースを受講し、サッカー心理学、フィジカル、スカウト、分析などの資格を取得。また小学生からトップチームまでの指導を実践し、最近ではベルギーのワースラント=ベフェレンでプレーする小林祐希の個人分析官も務めた。

「将来は欧州のトップクラブを指揮して、UEFAチャンピオンズリーグに出場したい」

 夢は大きく広がった。

(第2回へ続く)

■塚本修太(つかもと・しゅうた)

 1997年6月21日生まれ、茨城県出身。幼少期からサッカーを始め、小、中学校は地元のチームに所属したが高校は名門・前橋育英高校サッカー部に進学。度重なる怪我で高校2年の夏に中退したのち、サッカー指導者を目指すためにイギリスのソレント大学のフットボール学に進学。サッカーを学問として勉強するなか、FAの心理学ライセンスはレベル5まであるなかで日本人で初めてレベル4まで取得。その他にもスカウト、分析、フィジカル、コーチングの資格を取得。コーチをしていた育成年代のチームは2年連続その地域での年間優秀チームに。昨年は小林祐希(ワースラント=ベフェレン)の個人分析官を担当した。

(加部 究 / Kiwamu Kabe)

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加部 究

1958年生まれ。大学卒業後、スポーツ新聞社に勤めるが86年メキシコW杯を観戦するために3年で退社。その後フリーランスのスポーツライターに転身し、W杯は7回現地取材した。育成年代にも造詣が深く、多くの指導者と親交が深い。指導者、選手ら約150人にロングインタビューを実施。長男は元Jリーガーの加部未蘭。最近、選手主体のボトムアップ方式で部活に取り組む堀越高校サッカー部のノンフィクション『毎日の部活が高校生活一番の宝物』(竹書房)を上梓。『日本サッカー戦記~青銅の時代から新世紀へ』『サッカー通訳戦記』『それでも「美談」になる高校サッカーの非常識』(いずれもカンゼン)、『大和魂のモダンサッカー』『サッカー移民』(ともに双葉社)、『祝祭』(小学館文庫)など著書多数。

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