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丸刈り規則は人権問題に? 米高校生に見る、髪形で“部活の制限”は許されるのか

人種差別につながる例も…レスリング選手の髪を巡って大混乱

 髪形の問題は性別による機会の制限だけでなく、人種差別にもつながる。

 昨年12月には、米ニュージャージー州の高校レスリング選手の髪を巡って、大混乱が起こった。

 高校レスリングは競技規則で髪の長さが定められている。規則よりも髪の長い選手は決められた仕様のキャップを被らなければいけない。出場した一人の高校生選手はドレッドヘアの長髪だった。審判は、この選手の持っていたキャップも規則に準じたものではないとして、試合直前に髪を切るか、試合を放棄するかを迫った。審判は白人、高校生選手は黒人。選手は髪を切り落として試合をしたのだが、はさみを入れる様子の動画がSNSで拡散されると、人種差別、人権問題だとして批判の声が巻き起こった。人種によって髪質は違うから、適したヘアスタイルも違う。ドレッドヘアは黒人のアイデンティティにかかわるものでもある。規則違反だとした審判の判断は競技規則に則ったものなのか、それとも人種差別だったのかを巡って混乱した。

 人種差別ではないかという批判を受け、今年4月に、米国の高校レスリング規則は一部が改正された。ビーズやピンなどを使って髪をまとめることの禁止を追加し、髪をトリミングすることなどの言葉を削除した。規則を読む限りでは、ドレッドヘアでも良い、ただし、長髪の場合はキャップを被ることと解釈できる。

 私はミシガン州の中学生の陸上大会で、ターバンをつけて走っている男子生徒を見かけたし、近所の高校の陸上部の練習にはヒシャブをまとっている女子選手の姿もあった。人種、民族、宗教によって髪形は変わる。競技規則ならば、それに従わなければ試合には出られないが、特定の価値観に基づいたヘアスタイルを求めることは、人権問題につながる。

 ただし、厳密にいえば、どのようなヘアスタイルでも良いというわけではないだろう。各学校には校則としてドレスコードがあり、私の子どもが通う学校のドレスコードには、髪は清潔にすること、などと書かれている。埃や皮脂まみれであると違反とみなされ、警告されるかもしれない。(私の子どもが小学校や、デイケアと呼ばれる保育園に通っていたときには、クラスでシラミが発生したことがあった。感染の恐れがあるので各家庭に注意を促すように連絡があった。髪を清潔にするというのは、見た目の問題だけでなく、健康や公衆衛生の問題がある)

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谷口 輝世子

デイリースポーツ紙で日本のプロ野球を担当。98年から米国に拠点を移しメジャーリーグを担当。2001年からフリーランスのスポーツライターに。現地に住んでいるからこそ見えてくる米国のプロスポーツ、学生スポーツ、子どものスポーツ事情を深く取材。近著に『なぜ、子どものスポーツを見ていると力が入るのか――米国発スポーツ・ペアレンティングのすすめ』(生活書院)ほか、『帝国化するメジャーリーグ』(明石書店)『子どもがひとりで遊べない国、アメリカ』(生活書院)。分担執筆『21世紀スポーツ大事典』(大修館書店)分担執筆『運動部活動の理論と実践』(大修館書店)。

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