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名門・横浜をノーシード校が金星寸前まで追い込めたワケ ピンチで好プレー連発の裏に…1分間スピーチで精神鍛錬――平塚学園

高校野球の第107回全国選手権神奈川大会は22日、保土ヶ谷球場で行われた準々決勝で、平塚学園が春のセンバツ王者・横浜に4-5で逆転サヨナラ負け。番狂わせとはならなかった。それでも、ノーシード校が第1シード校に金星寸前の大健闘。秋春と日本一になり、全国の強豪を下してきた横浜を追い詰められた理由とは。(取材・文=THE ANSWER編集部・戸田 湧大)

ピンチの場面でマウンドに集まり、一致団結を図る平塚学園の選手たち【写真:戸田湧大】
ピンチの場面でマウンドに集まり、一致団結を図る平塚学園の選手たち【写真:戸田湧大】

第107回全国高校野球選手権・神奈川大会

 高校野球の第107回全国選手権神奈川大会は22日、保土ヶ谷球場で行われた準々決勝で、平塚学園が春のセンバツ王者・横浜に4-5で逆転サヨナラ負け。番狂わせとはならなかった。それでも、ノーシード校が第1シード校に金星寸前の大健闘。秋春と日本一になり、全国の強豪を下してきた横浜を追い詰められた理由とは。(取材・文=THE ANSWER編集部・戸田 湧大)

 たった1球が明暗を分けた。前日に高速の打撃マシンで目慣らしした平塚学園は速球派が揃う横浜を打ち崩し、3回までに4-0とリードする絶好の展開。8回に1点差に迫られたが「チャレンジャーとして楽しんでいくぞ」。主将・松本梗吾(3年)の檄で攻めの姿勢を忘れず。9回2死二、三塁から逆転サヨナラ打を打たれ、ナインは大粒の涙を流したものの、金星まであと1球に迫った奮闘は見る者の胸を打った。

 智辯和歌山、明徳義塾、東海大相模などを倒し、秋春日本一を達成した横浜。全国の強豪校すら成し得なかった攻略に迫った平塚学園は、珍しい取り組みで強化を図ってきた。それが、独自のメンタルトレーニングだ。

 全ては技術や身体能力で敵わない相手に打ち勝つため――。「SBT(スーパー・ブレイン・トレーニング)」と呼ばれる、思考をコントロールする方法を身に付ける精神鍛錬だ。月に1度外部コーチを招き、感情などのブレない心を鍛えてきた。

「勝利」をテーマに原稿用紙に「なぜ勝つことが必要か」「勝つために何が必要か」などを書き込み、1人1分のスピーチで意思表明。5人1組で議論し、目標に対する意欲と手段の解像度を上げてチームの共通認識を作る。

 ただ、それだけではない。松本は「相手が嫌がるような動作や、対戦したことがない雰囲気で畳みかける。全てが仕掛けられているような空気感を作る」と思考を明かす。ピンチの場面でも自らが常に主導権を握り、相手の雰囲気に飲まれない。

 それは4-3で迎えた8回2死満塁の大ピンチでも見て取れた。2番手の山口禅(2年)は2球であっさり追い込み空振り三振。9回1死一、二塁では右前に転がった打球を右翼手の藤原レイ(3年)が本塁へ好返球。二塁走者を見事に刺した。並のチームならとっくに飲まれていてもおかしくない。ここぞの場面で完璧なプレーが出来たのは、メンタルトレの成果も大きいだろう。

 負ければ高校野球が終わる夏の大会。緊張は不安を生み、不安はミスを生む。そんな極限状態でも八木崇文監督は「(ナインの)メンタルは100点だった」と満足感を示す。常に攻めの姿勢をとり続ける共通思考――。平塚学園野球部が磨いた武器の価値は、強豪・横浜を相手に間違いなく証明された。

(THE ANSWER編集部・戸田 湧大 / Yudai Toda)

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