丸刈り強要やお茶当番を廃止 深刻な野球離れ阻止へ、2人の中学教師が地域と取り組む育成改革
イベント参加の約65%の保護者が「子供に野球をさせたい」と回答
越谷市立大相模中学軟式野球部顧問の長瀬翼さんが発起人となって、昨年4月1日、『野球の街越谷』実行委員会を設立した。武田さんらと同じく小中学生の野球離れを食い止め、競技人口の盛り返しを狙った。野球を越谷市の文化として根付かせることも活動方針の目玉である。
「越谷を野球の街にする構想を市民に知ってもらうため、イベントの開催を告知した時、この街は野球に熱い人が多いと実感しました。小中学生の競技人口は減っているが、興味を引くきっかけさえあれば、競技者は増えると感じました」
21年12月5日、『埼玉baseballフェスタin越谷』を実施すると968人が来場。川口と同じように幼児から小学6年生までの未経験者を招き、プロ野球・埼玉西武のOBが手ほどきする野球教室や的当てゲーム、サークルベースボールなどを楽しんでもらった。アンケートでは「子供に野球をさせたい」と回答した保護者が64.7%もいた。
昨年9月に小中高校の女子6チームによる『越谷女子野球の日』を開き、11月は大学・社会人も出場した『越谷野球の日』、12月には第2回『埼玉baseballフェスタin越谷・八潮』を開催。実行委の熱意はイベントを重ねるごとに市民に伝わり、盛り上がっていった。
長瀬さんは「いずれ少年野球チームの関係者にこういった行事を地区ごとにやってもらえたら、小中学生の野球人口も増えていくのではないか」と期待を寄せる。
着眼点も非凡だ。プロ野球チップスなどを販売するスナック菓子メーカーのカルビーと協力し、タレントのマネジメントなどを手掛ける吉本興業が主催する『よしもとエンジョイベースボールin越谷』を挙行。講師役にトータルテンボスの藤田憲右さん、元埼玉西武の片岡保幸さんを招いて少年少女に野球の楽しさを伝えた。
「お笑い芸人や元プロ選手と一緒になれたら興味を持ってもらえますよね」(長瀬さん)
自分の子供に野球を勧められない理由の1つにお茶当番があり、多くの親が重荷に感じているそうだ。だが「市内の少年野球チームはお茶当番廃止など、親の負担を減らす試みを始めています。活動の実態を見学していただきたい」と訴える。