「日記を読むと、分かるんです」 箱根の号泣から1年、國學院大・平林清澄を支える秘密
日記で立ち返る原点、1年のテーマは「心の隙を無くす」
平林が本格的に陸上を始めたのは、高校入学後。すぐに頭角を現し、1年から全国高校駅伝のメンバーに入り、都大路を走った。國學院大進学後も、初の大学駅伝となる出雲駅伝で、最終区に抜擢。9区を走った箱根駅伝では5人抜きの快走をみせた。
そして、個人種目でも今年3月の日本学生ハーフマラソン選手権で初優勝。まさに長足の進歩といえる。
勿論、調子を落とすこともある。そんなとき力になるのが、毎日書き続けている日記だ。
「日記はよく見返します。細かくみると、文字や文末の違いなどから、書いたときの自分の状態がすごくわかるんです。
例えば、『こうしていきたいと思います』ぐらいの柔らかな表現なのか、『こうします』という強い表現なのか。あと、書いてある意識のベクトルが自分に向いているのか、チームや他人に向いているかとか、その日によって違う。
日記を読むと、他人にベクトルが向いているときが結構あって。そういうとき、僕は調子が悪いんです」
調子が悪くなると、自分がわからなくなる、という。そんなときは、日記を見返し、原点に立ち返ることを心がけている。
「自分は何のためにここにいるのかとか、ここで何をしたいのか、しないといけないのかとか。そうやって原点に立ち返るようにしたら、走れるようになりました。
自分の中に目的とか、目標とか、ちゃんと持っていれば、自分を見失うことはないですから」
取材が行われた寮の壁には、全選手の今年度下半期の目標が貼られていた。フィジカル、メンタル、生活習慣、そして記録。「細かく書かないと忘れてしまうので」という平林は、目標達成のためにすべきことを、誰よりも細かく、そしてみっちり書き込んでいた。
「僕の今年1年間の最大のテーマは『心の隙を無くす』です。
僕は前田さんに1年の夏頃からずっと、『お前は心の隙が出まくっているから、ちゃんと無くせ』と言われています。でも、自分では何のことかわからない(笑)。だから言われるたびに、『心の隙って何だろう?』と、考えるようになりました。
最近、思うのは、前田さんが僕を見るように、自分自身の言動や行動をちゃんと客観視できれば、心に隙があるとわかるんだな、ということ。
結局、隙とは詰めの甘さなんですよね。詰めの甘さは、最終的に自分に回ってくる。前田さんが言っているのはそういうところかなと考えながら、この1年、取り組んでいます」