Jリーグ得点王佐藤寿人、高知の高校生に語った海外移籍話の葛藤「本当の喜びを感じられるか」
攻撃に特化した練習メニューで「出し手」と「受け手」の意識を共有
「雰囲気を感じたい」という希望もあって、選手たちとともにアップを行った佐藤さん。4対2で行われた“鳥かご”と呼ばれるボール回しの後、「しっかり水分補給をすることを大事にして」とポカリスエットで給水を促し、いよいよ佐藤さんによる本格指導がスタートした。
ペナルティーエリア手前にDFに見立てたコーンを配置。中央でパスを受けた選手がコーンを交わしてシュートをするという練習で、前方に立つコーチが上げるビブスの色に応じて「持ち込んでのシュート」なのか「体を開いてのシュート」なのかを判断する。その際、頭を上げて直接ビブスを見るのではなく、視線はあくまでボール。“間接視野”でビブスの色を認識したうえでシュートの種類を決める。「最後、シュートを打つ時にしっかりボールを見る」という前提のもと、咄嗟の判断でプレー選択をさせる練習は、ストライカーの佐藤さんらしいメニューだ。
最初は選手たちも戸惑い気味だったが、10月22日に高校選手権高知予選の初戦となる準々決勝に臨むメンバーたちは次第に持ち前の技術と判断力を発揮。鋭いシュートでゴールネットを揺らし、佐藤さんの「ナイスシュート!」という声が響いた。
続いてのメニューはサイドからのクロスに対し、中央で2人の選手が合わせるという練習。佐藤さんは中に入る選手に対して「自分が欲しいタイミングではなく、サイドの選手がどういう状態かを見て動き出しの判断をする」と伝え、サイドの選手には「この空間にボールを入れれば得点になるというクロスを入れる。その際、中の人に合わせなくてもいい。いいボールを入れたらそれで仕事は終わり、というくらいの気持ちで」と1本のクロスに対する集中力を求めた。
ピンポイントクロスに対し、DFとの駆け引きから一瞬で飛び出し、ワンタッチで合わせるというプレーは現役時代の佐藤さんの真骨頂。ただ、これを成立させるためには出し手と受け手の意識が共有されていることが必要だ。最初はなかなかゴールに結びつかなかった選手たちだったが、「これを決めなきゃ選手権に行けない、という後半アディショナルタイム4分のラストワンプレーだと思ってやっていこう!」との声が佐藤さんからかかると、絶好のクロスに飛び込んだ選手がゴールを決める場面も増えた。
その後、給水の際にポカリスエット・アイススラリーも摂取して練習を再開。5対5のゲーム形式ながら、両サイドにフリーマンの選手を2人ずつ配置し、ここでもクロスからゴール前で合わせるということに重点を置いたメニューを展開した。選手たちはプレーを重ねていくうちに質の高いクロスやタイミングのいい動き出し、ゴール前のシュートなどを披露。約1時間30分にわたり、攻撃に特化して行われた練習を締めくくった。
練習後、佐藤さんは選手たちに「良いクロス、良い入り方を意識しないと良いゴールは見えてこない。『見る』ということはすごく大事。味方の状況を見ないと良いタイミングでシュートは打てない。これをみんなで意識して積み上げていくことでレベルは上がっていくと思うので、これを試合に生かしていただきたいと思います」と伝えた。