五輪V3柔道家・野村忠宏氏の言葉「特別な人だけが結果を残せるのではない」
柔道人生を変えた出会い
「ベスト4までいけるんじゃないかと思っていた自分の実力の認識の甘さ、そして全国には同世代だけでこんなに強い選手たちがいるんだと、全国のレベルの高さを痛感しました」
この悔しさを糧に天理大学へと進んだが、またしても高い壁に跳ね返される。大学入学直後、公式戦出場につながる校内予選でのことだった。
100名いる柔道部員の中から、同じ階級の選手10名と予選を行い、上位3名の選手が大会に出場できる。だが、「その校内予選で何敗したか覚えていないくらい負けた」と野村さん。当然、公式戦には出場できなかった。
それでもそのわずか3年後の大学4年生には五輪金メダリストとなった。急成長の裏には、1984年ロサンゼルス五輪金メダリストの細川伸二氏との出会いがあったという。同氏のもとでそれまでの甘さを痛感させられ、練習に対する意識が変わっていったと野村さんは振り返る。
「普段から練習、努力、頑張りというのを見てくれている先生だからこそ、言えるアドバイスがあると思うんです。その中で選手は本当に意味のあるものを触れ、気付いて、変わっていきます。自分自身にもそういう先生との出会いがあって、導いてくれたところがありました。しかし、いい出会いというのは、中途半端な気持ちで普段の練習に取り組んでいる選手には訪れないと思う。不器用でも下手くそでも、前を向いて真剣に取り組んでいる選手だけに(出会いは)あると思うんです」