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22:30に送られた涙のLINE 青春を土俵に捧げる北陸の高校生力士の「日本一」の意味

「それぞれの日本一を目指す」部員の背中を押す中山昌監督【写真:山田智子】
「それぞれの日本一を目指す」部員の背中を押す中山昌監督【写真:山田智子】

去年の3年生から学んだ「日本一を目指す」ことの意味

 2年ぶりに開催されるインターハイ。「日本一」という目標は変わっていない。しかしその意味はコロナ禍を経て少し変化した。大事なのは「それぞれの日本一を目指す」ことなのだと。

「大会で勝つことだけが大事なことじゃない。そう思えたのは、コロナ期間があったからです。努力は裏切らない。努力してきた道筋、積み上げてきたものは人生の財産になるし、結果よりも大事なものだと身に染みた1年間でしたね」

 最後の年に一度も大会に出ることなく、相撲を引退した去年の3年生にも「それは相撲じゃなくても同じこと。これからも一生懸命努力を続けて、自分なりの日本一を目指してほしい。人生の勝者になれ」とはなむけの言葉を贈ったという。

「それぞれの日本一を目指す」。そのために大事にしているのが、「一人ひとりの輝ける場所を見つけてあげること。そして、選手が自主的にそれに取り組むこと」だと中山監督は話す。

「とても熱心。年齢も若いので、選手と近く接してくれる。中山先生の下で稽古がしたくて(越境)入学した」(藤田大智・3年)。元々、丁寧な指導で、選手からの慕われている中山監督だが、コロナ禍で選手と直接コミュニケーションを取る機会を奪われたことで、「選手をしっかりと見極めることの大事さ」をいっそう実感している。

「一人ひとりが絶対に良いところを持っています。それぞれの個性を考えて、自分が輝ける場所で勝負できるような指導を常に心がけています。

 押し付けではなく、どこを磨けば自分は日本一光るのか、自分の長所はどこなのかということを一人ひとりに掴ませる。土俵で向き合った時に、相手よりどこが勝っているのか、つまり自分を知ることができていないと試合には勝てない。

 でも、そこは選手一人ではなかなか分からないと思うんですね。僕が『ここが良いところだよ』と伝えてあげることで気がつくことができます」

 藤田主将は、「中山先生は一人ひとりに、『そこ、いいね』『ここは、お前のすごい魅力だ』いう風に気持ちを高めてくれる。チームの雰囲気はすごくいいですね」と証言する。

 そして、選手に合わせた細やかな指導がわかる、こんな話も聞かせてくれた。

「時々先生が寮に泊まることがあるんですが、僕は身体が小さいので、牛丼などの夜食を持ってきてくだったりします。土日の稽古の後も、寮生3人をご飯に連れて行ってくれますし、たまに寮の食堂で料理を作ってくださることもあります。僕は体重が増えづらくて、入学した時は80キロしかなかったんですけど、今は95キロになりました。すごく感謝しています」

 もちろん、結果としての日本一にも狙いを定める。

「自分が1年生の時に、先輩たちが宇佐大会で全国2位になった。YouTubeで見ていて、先輩方がすごくかっこよかったし、すごくいい試合でした。自分たちもそれを超えられるように、今、毎日の稽古を頑張っています。今年は五十嵐を筆頭に強い選手がたくさんいるので、日本一を狙います」(藤田)

「団体のメンバー5人に入れるかはまだわからないんですけど、メンバーに入っても入れなくても、去年の先輩が悔しい思いをしているので、自分たち3年生が後輩や同級生をサポートして、みんなで日本一を取りたい」(館)

 チーム練習が終わった後も、誰一人帰らず、1時間以上残って個々の課題に取り組む姿に、2年分の夏に懸ける思いが垣間見える。

「今はキツいと思いますよ。怪我をしている選手も多いし、それでもみんな歯を食いしばってやっている。この経験は人生において絶対に自分を支えてくれるものになるので、今を全力でやってもらいたいです。

 でも一番は、ほとんどの選手はインターハイ初の経験なので、大会を楽しんでもらいたい。この子たちが楽しんで、一生懸命やっている姿を見てもらうということが恩返しになると思う。地元・北陸での大会ですし、色々な意味で恩返しの大会にしてもらいたいです」

 高校生力士たちの暑い“夏場所”が、まもなく幕を開ける。

■インターハイの女子ソフトボールは28日に開幕し、4日間にわたって熱戦が繰り広げられる。今大会は全国高体連公式インターハイ応援サイト 「インハイ.tv」 が全30競技の熱戦を無料で配信。また、映像は試合終了後でもさかのぼって視聴でき、熱戦を振り返ることができる。

【注目】「できっこないを、やる夏だ。」 全国の高校生を応援、全30競技ライブ配信「インハイTV」特設サイトはこちら

(山田 智子 / Tomoko Yamada)

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山田 智子

愛知県名古屋市生まれ。公益財団法人日本サッカー協会に勤務し、2011 FIFA女子ワールドカップにも帯同。その後、フリーランスのスポーツライターに転身し、東海地方を中心に、サッカー、バスケットボール、フィギュアスケートなどを題材にしたインタビュー記事の執筆を行う。

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