逆境どう乗り越えるか 柔道金メダリストが語る成長の転機とは
ケガによって生まれたイメージと現実のギャップ
「実は柔道の技術を、しっかりと考え始めたのは20代中盤に入ってからなんですよ。もちろん中学生や高校生の時から一生懸命やっていたんですが、ただ、自分のしっかりとした技術を突き詰めていくというところまでは至っていませんでした」
野村さんは天理大時代にロサンゼルス五輪60キロ級金メダリストの細川伸二氏にハードな乱取りを課され、自らを極限まで追い込む意識を植え付けられた。だが、柔道の技術について真剣に考えるようになったのはケガをするようになってからだという。
「技術について本気で考えるようになった理由は、ケガや年齢を積み重ねることで自分のイメージと体のギャップを感じるようになったからです。簡単に言えば以前なら感覚的にできていたことができなくなり、技が単純にかからなくなってしまった。だから、ガムシャラになって練習に取り組みつつも、その姿を見た細川先生がアドバイスをくれたんです」
野村さんは今夏、大塚製薬株式会社が取り組む「ポカリスエット エールと、ともに。 ブカツ応援キャラバン」の一環で、神奈川県の桐蔭学園高を訪問し、全校生徒対象の講演会と柔道部への指導を実施。その際、柔道部員に自身の得意技である背負い投げをつり手、引き手、足の動きなどのテクニックを伝授した。その中で繰り返し実演したのは軸足の一歩目の踏み込みを使い分ける点だったが、この技術もケガをしたことで試行錯誤し、身に着けたものだという。