「誰に対しても全力勝負です」 高校生に“本気を出した”重量挙げ・三宅宏実のエール
男子生徒のまさかの悩み「練習が楽しくてやめられない」、三宅が即答した言葉とは
続いてオンライン授業は質問コーナーへ。『技術』『メンタル』『進路』の3項目について、三宅は高校生の疑問に真正面からぶつかった。
技術については競技を始めたばかりの1年生から、中学から長く続けてきた3年生まで幅広い質問に真摯に回答。15年3月から所属の「いちご」で選手兼コーチとして活動している三宅は「足まで見えないですよね? でも見せたいです」と、パソコン画面の限られたスペースに四苦八苦。身振り手振りを交えて具体的な解決策や練習法を授けた。
メンタルについては、自己記録と闘う競技ならではの質問などが飛んだ。
――記録が伸びない時にモチベーションはどうやって上げていますか
「これは一番悩むところですね。記録が伸び悩む時はみんな必ずあるんですが、その時にどうするかという取捨選択が凄く大事。私もその繰り返しです。落ち込むけど、今できることとできないことは何か。できないことは仕方ないけど、できることを一生懸命やる。でも、あくまでもしっかりとした目標設定が大事。それに向かって小さな目標を立てながら積み重ねていくのがいいと思います」
――試合で緊張するのですが、自分の力を出し切るにはどうしたらいいですか。
「私も何回試合に出ても、もの凄く緊張します。高校生の時なんて怖すぎていつも泣いていました。やっぱり自分の力を出し切るって難しい。20年やっても6本とも成功したのは5、6回くらいしかない。私が一番重要視しているのは練習です。日々の練習でどれだけ試合を意識できるか。練習で自信をつけて舞台に上がる。練習で後悔なくやったから試合でも自信を持てると思います」
――コロナ禍でいろいろな大会がなくなってモチベーションを保つのが大変です。そういう時の保ち方はありますか。
「オリンピックが延期になって、私も一回は下に落ちました。でも、モチベーションを保つことはもの凄く難しいです。もちろん『五輪に出る』『メダルを獲る』という目標はあるけど、五輪に行くまで心と身体が合致しないといいパフォーマンスができない。モチベーションを保つには、やっぱり自分が楽しむことですね。楽しまないとウエイトリフティングはできないので。
自分の好きなことを楽しむためにはどうしたらいいか。私は先のことを考えると長くなるので、先は考えず目の前のことに全力投球します。一日で出し切る。今できることを精一杯やった積み重ねで、気づいたらゴールが見えています。日曜の休みのために頑張ろうというのも私のモチベーション。休みにあれしよう、何か食べたいなとか、楽しみを見つけてモチベーションを維持していくのもいいと思います」
質問した生徒はコロナ禍で大会が減っていき、夏に7か月ぶりの試合を迎えられたという。三宅が「久々に試合に出た時はどんな感じでした?」と問いかけると、生徒は「その時は本当に嬉しくて、毎日の練習が楽しかったです」と笑顔。三宅は見透かしたように言葉をかけた。
「やっぱり。その気持ちです。その楽しい、嬉しいというのが大事。それがモチベーションの一つになる。大会を控えて凄く緊張したり、いろんなことがあったりすると思うけど、出られる喜びを感じながら挑戦してほしい」
多くの質問を受けた中、とりわけ三宅の表情をほころばせたものがある。ある男子生徒の「練習が楽しくてやめられない時がある。ほどほどにするにはどうしたらいいですか」という悩みだ。ニコリと笑った三宅は「いいじゃないですか。やめなくて」と即答。そしてこう続けた。
「とことんやっていいんじゃないですかね。高校生の本当にいいところは元気なんですよ。勢いと疲れ知らずで寝たら回復するのが10代の特権。20代になるとそれは本当に低下してくる。10代でやってきたことが大学、その先に繋がるので『もういい!』っていうくらい練習をやってください。私は推します。怪我しない程度にね」