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五輪ボイコットを経験した父の言葉 フェンシング千田健太が高校生に伝えたエール

自分に自信がない高校生へ「不安になるのは勝ちたいから」

 授業は続いて、「技術」「メンタル」「将来」に3テーマについて、参加する高校生の質問に千田さんが答えるコーナーへ。質問する高校生一人ひとりに「質問をありがとうございます!」とお礼を述べてから、さらに、質問内容を深く掘り下げていく千田さん。高校生が抱える疑問や不安に対し、できる限り具体的に答えたいという、真摯な気持ちが伝わってきた。

――脚の動きを速く、美しく、スムーズにするコツを教えてください。

「僕も高校時代は、フットワークがうまくいかず、相手の攻撃に対し、下がり遅れてしまうことはよくあった。フットワークの上達のためには、まず、普段の練習で脚の引き付けを癖づけること。そして、下がりに関しては反応するよりも、事前に予測することが大事です。僕も反応のスピードは普通です。だけど、ほかの人よりは予測ができ、相手の攻撃を読んで下がるから、ワンテンポ速い。次から『予測して下がる』練習をしてみてください」

――大会当日、朝起きたときから「今日はダメかも」とマイナスに考えてしまいます。会場でも他の選手が強く見えたり、試合中も勝負がついてないのに弱気になったりと、自分に自信がありません。

「僕はオリンピックでメダルを獲りましたが、実はフェンシングを始めてから日本代表になってもずっと、試合当日はいつもお腹を壊していました。でも、不安になるのは勝ちたいから。そういう緊張感がないと力を発揮できないと思うし、いいことだと思います。

 フェンシングでは、世界ランキング上位の選手でも、すぐに負けることがあります。これは、世界の大きな大会ではよくあることです。フェンシングに『絶対』はありません。ですから、相手がどうこうよりも、自分自身の練習の成果を試合で出すことが大事。それでダメなら仕方がない、と割り切った気持ちになれるよう、ベストを尽くしてほしいと思います。

 どんなに強い選手も同じ人間なので、不安を抱える、緊張する気持ちは一緒です。その気持ちを受け入れて、頑張ってください」

――練習でうまくいかない、試合で負けるなど、物事がうまくいかないとイヤになります。どうしたら、困難を乗り越えられますか?

「フェンシングというのは、かなり難しいスポーツだと思います。なぜなら、試合では相手と動きの速さを競い、剣をうまく操作し、かつ、うまく試合を組み立てないといけません。

 僕も現役を引退した4年前まで、『うまくいかなかった』という経験はずっとありました。練習では手応えを得られても試合には勝てず、悩んだ時期はたくさんありました。

 でも、壁にぶつかるのは、次の大きなステップへの前兆だと思います。なんでうまくいかないのだろう、ならばこういう技はどうかな? とさらに練習をする。これがうまくいくと、大きな自信になります。何がよかったか悪かったのかを考える力を養うところが、フェンシングの醍醐味であり、難しさです。うまくいかないことも経験し、乗り越え、そういった経験を楽しんで、自信にしてほしいと思います」

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長島 恭子

編集・ライター。サッカー専門誌を経てフリーランスに。インタビュー記事、健康・ダイエット・トレーニング記事を軸に雑誌、書籍、会員誌で編集・執筆を行う。担当書籍に『世界一やせる走り方』『世界一伸びるストレッチ』(中野ジェームズ修一著)など。

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