「1秒も乗れなかった」ところからのスタート カヌー北本忍が高校生へ伝えたエール
カヌーで五輪3大会に出場した北本忍さんが25日に配信された「オンラインエール授業」に登場した。「インハイ.tv」と全国高体連が「明日へのエールプロジェクト」の一環として展開する企画に登場。インターハイ中止という経験から前を向く全国のカヌー部を対象に授業を行い、努力を続けることの大切さを改めて説いた。
「オンラインエール授業」で全国のカヌー部員にメッセージ
カヌーで五輪3大会に出場した北本忍さんが25日に配信された「オンラインエール授業」に登場した。「インハイ.tv」と全国高体連が「明日へのエールプロジェクト」の一環として展開する企画に登場。インターハイ中止という経験から前を向く全国のカヌー部を対象に授業を行い、努力を続けることの大切さを改めて説いた。
【注目】「大人の私も受けたい」とネット話題 誰でも観られる「オンラインエール授業」はこちらから(過去のアーカイブ動画も視聴可能)
北本さんが登場した「オンラインエール授業」はインターハイ実施30競技の部活に励む高校生をトップ選手らが激励し、「いまとこれから」を話し合おうという企画。ボクシングの村田諒太、バドミントンの福島由紀と廣田彩花、バレーボールの大山加奈さん、サッカーの仲川輝人、佐々木則夫さんら、現役、OBのアスリートが各部活の生徒たちを対象に授業を行ってきた。
その第23回の講師として、2004年アテネ、08年北京、12年ロンドンと五輪3大会連続で出場した元名選手が登場した。
北本さんは武庫川女子大3年時に日本代表選出、以来数々の国際大会で活躍し、五輪以外でも2009年のスプリント・ワールドカップ(W杯)チェコ大会カヤックシングル500メートルで日本人としてW杯初優勝。10年のポーランドでの世界選手権では銅メダル。アジア大会でも日本人初の金メダルを獲得するなど、輝かしい実績を積み重ねてきた。
そんな女子カヌー界の先駆者だが、競技を始めたのは大学入学後だった。高校まではバレーボール部に所属。10年間も続けてきた球技から、カヌーへ転身した理由は何なのか。画面に並んでいた高校生たちも興味津々の様子で、北本さんの言葉に耳を傾けた。
「バレーボールが大好きで、大学でもバレー部に入る気だったんです。でも大学のバレー部が意外に強くて、推薦の選手がたくさん入ってきていた。私は一般入試だったので、ちょっと敷居が高かった。それで違うスポーツに挑戦してみようと思って。最終的には同じクラスの友達に誘われて、気軽に入った感じなんです」
だが実は同女子大はカヌー部もバレー部に負けず劣らずの強豪だったという。OGには日本代表選手が何人も。同級生も中学、高校での経験者ばかりだった。戸惑いも大きかったというが、先輩たちからの指導でどんどんのめり込んでいった
「カヌーって最初は1秒も乗れないんです。最初はそれが衝撃的で、どうしよう、やっていけるのかなと……。それでもたくさんの人が教えてくれて、どんどん楽しくなっていきました」
当時を懐かしそうに振り返った北本さん。大学時代に飛躍のきっかけとなった印象的なエピソードも明かすと、画面越しの高校生たちの目の色の変わった。
北本さんが初めて日本代表入りしたのは大学3年の春。だが、その前年までは全日本選手権は予選落ちするなど、「日本代表はほど遠かった」と振り返る。転機はコーチからの一言だった。オフに入る前に「この冬、正月もなしに1日も休まずに練習したら、3月には日本代表になれるからやってみないか」と告げられたという。
「迷ったけど、日本代表という言葉に魅力を感じました。憧れていた日本代表に頑張ればなれると言われたことがすごく魅力で、誘惑も断ち切って(笑)、本当に1日も休まずに練習しました。そうしたら3月の大会で初めて決勝まで行けた。日本代表になれたんです」
努力は嘘をつかない――。使い古された言葉かもしれないが、北本さんはそれを実践し、見事に成果につなげて見せた。さらに「自分の考えでは及ばないことを、ちゃんと言ってくれる人が周りにいたこともすごく重要だった。先生やコーチのアドバイスを一度聞いてみようと思ったことも大きかった。それ以来、どんなアドバイスでも一度やってみようと思うようになりました」と続けうなずいた。
周りからの声に耳を傾けることの大事さも説いた北本さん。大先輩からの言葉に高校生たちも熱心に聞き入っていた。