「君は何のためにレスリングを?」 高校生と“ぶつかり合った”高谷惣亮の熱いエール
高校生に気づかせた大事なこと「君は何のためにレスリングをやっているの?」
「減量によって体が動かない、試合で自分の思ったようなパフォーマンスができないのなら、あまり減量はしない方がいい。というのも、自分の最大のパフォーマンスをするために体を壊す必要はないのよ。自分がその階級で戦わないといけないと思っているのも、それはただの意識の問題。本来、自分の最もいいパフォーマンスができるのは、もしかしたら上の階級かもしれない。
だから、一つ考えを改めてほしいのは、減量するためにレスリングをするのではなく、レスリングをするために減量してほしい。俺自身が74キロ級で戦っている時に失敗したのは、体重を落とさなきゃいけないという意識でいっちゃったの。自分のレスリングでベストを出すためにやっていくことが大事」
見失いがちな「レスリングのために」という視点の重要性を強調した。以降も「レスリングで使う力の筋トレ方法」「筋トレした後は何を食べるか」などの質問に対し、専門的な知識を添えて回答。「答え」だけでなく、「なぜやるか」という理由や具体例も付け加えて解説した。
2人の男子選手が明かした「試合前に緊張しすぎて、試合でいい動きができない」「緊張をほぐす方法を教えてほしい」という悩みには「どんなことに対して緊張する?」と逆質問。緊張の原因を自己分析させた。人間は未知のものに恐怖を覚えるため緊張するということを説明し、練習から相手を想定する大切さを伝えた。
「俺自身は緊張を悪いイメージで捉えていなくて、ある程度緊張した方がいいと思う。というのも、緊張することでアドレナリンが出て試合に集中できるから。ただ、過度なアドレナリンが出ると体が震えてくる。体が震えてくると、体が固まって筋肉も硬直して、いいパフォーマンスに繋がらない。そういうメカニズムがあるんだけど、緊張と仲良くなるためには自分で緊張する状態を予めつくっておけば大丈夫。だから、俺自身も緊張はするんだけど、これは凄くいい緊張。もう友達」
質問者の悩みについて、何度も質問で聞き返す。一人ひとりのことを知り、“ぶつかり合い”を重ねてから答えるよう努めた。一人の選手が「自分は人前で話すのが凄く苦手で、試合で見られていると感じると凄く緊張してしまいます」と打ち明けると、高谷は「じゃあ技術的なことで緊張するわけではじゃないんだ」と返答。「アドラー心理学」を引き合いにこう説明した。
「人間の悩みは絶対に人間が起こしているのよ。絶対に人と人との繋がりが緊張とか、そういった現象を起こしている。それをまずは認めることから始めないといけない。自分がレスリングをやっているのはなぜなのか考える。〇〇君は何のためにレスリングをやっている?」
思わぬ問いに緊張しながらも「自分は将来の夢のためにレスリングをやっています」と、勇気を持って言葉を絞り出した高校生。パソコン越しで離れていても、高谷は寄り添うように語りかけた。
「将来の目標、夢があるわけでしょ。それを叶えるためにレスリングをやっている時って、周りの目は重要なことなのかな? ね、重要じゃないよね。周りの視線があったとしても、自分の将来の夢や目標を達成するためにレスリングをやっている時って、周りの目や声はいうなれば雑音なのよ。
自分が一生懸命取り組んでいるレスリングに対して、周りの目線を気にして、あの人がどう思っているとか、あの人の目線が怖いなって気にするのは凄くナンセンスだと思う。将来の夢、目標があって『そのために俺はレスリングをやっている』と言うことができる子なのよ。だからもっと自信を持ってほしい。今こうやってZoomの中に他の高校生がおる中で、自分がレスリングをしている理由を言えるわけじゃん。自信を持ったらいいよ」