「楽しむこと」がサッカーに必要な理由 なでしこ長谷川唯が高校生に贈ったエール
忘れがちだけど、大切な「楽しむこと」の意味
「落ち込むことがあんまりない」と自認する性格。メンタルの作り方も長谷川らしく伝えた。
――怪我や今回のコロナのように、サッカーできない場合は、どうモチベーションを保ちますか?
「今回のように自分の体が元気な時に、みんなとサッカーができない状況はつらいし、もどかしいと思うけど、自分は家でたくさんトレーニングをして、この期間が終わった時に自分がどれだけ成長するかを楽しみにしながらやっていました。今回も、普段は試合が続くのでできない負荷をかけたトレーニングをやってパワーアップして、練習が始まった時のことを考えてトレーニングに励んでいました。やっぱり、自分のできることが増えるのはうれしいので。今までもそういう経験あったから、楽しんでできていました」
――夢や目標を叶えるために継続することはありますか?
「練習をすることはもちろんだけど、自分の中では『楽しむこと』を一番大事にしています。今回、みんなは大会がなくなってしまい、自分は五輪という目標が目の前からなくなってしまったけど、そもそも毎日の練習が楽しかったり、修正することをみんなで話し合ったりして、どんどんクリアして成長することが楽しくてやっている。そういう意味では夢を追いかけたり、目標を達成したりするためには楽しむことが大事。努力、練習することは大事だけど、そのために楽しむことが必要かなと思っています」
どんな状況でも「楽しむこと」の大切さ。当たり前のようでいて忘れがちなことをまっすぐな言葉で届けた。
他にも憧れの選手についてはアンドレス・イニエスタ(神戸)を挙げ、パス、ドリブル、シュートどれもが一級品であることに触れた一方で「自分はその選手のいいところを全部集めたような選手になりたいです。ドリブルに特化した選手のドリブルを吸収したいし、パスに特化した選手のパスを吸収したい、すべてにおいてトップを目指しています」と貪欲な成長の意欲を明かした。また、座右の銘について問われると、具体的なものはないとしながら、中村俊輔(横浜FC)の著書に書かれていたという「誰よりも練習すること、それが自信につながる」という言葉を紹介。「それは本当にその通りと自分も思います」と明かした。
等身大の言葉で、自然体のまま高校生と向き合った1時間。授業を終え、参加者を代表して1人の高校生が挨拶した。「部活動が行われていない今、サッカーをプレーする時間より考える時間の方が多くなり、不安や悩みが多くありましたが、この授業で長谷川選手からアドバイスをもらい、とても勉強になりました。今だからできるトレーニングなどをしっかりして、部活動再開後に良いスタートを切れるように頑張っていきたいです」。長谷川の言葉に救われ、前向きになれた様子だった。
笑顔で聞いていた長谷川も「明日へのエール」として高校生にメッセージを贈った。「自分は考えてサッカーをやることで、さらにサッカーを楽しめるようになりました。考えすぎて、空回りしてすることもあるけど、考えてやったプレーが結果につながると本当に楽しいので、これからもっと味わってほしい。今後、サッカーを続ける人、続けない人も高校時代の部活、サッカーで得た経験は生きてくる」と言った後で「今を全力で楽しんで、頑張ってください」と長谷川らしい言葉で締めくくった。
授業終了後に取材に応じた長谷川。これまで高校生とは触れ合う機会は多くなかったといい、授業について「なかなか話すことができない世代と話せて楽しい時間になりました。自分の高校生時代の話をして『なるほど』『タメになった』と言ってもらえてうれしかったです」と振り返った。今日を楽しみ、成長を求め、明日を前向きに生きること。現役のなでしこジャパンが画面を通じて届けたメッセージは、高校生の背中を押すエールになったはずだ。
■オンラインエール授業 「インハイ.tv」と全国高体連がインターハイ全30競技の部活生に向けた「明日へのエールプロジェクト」の一環。アスリート、指導者らが高校生の「いまとこれから」をオンラインで話し合う。今後はサッカー・仲川輝人、ハンドボール・宮崎大輔、元テニス・杉山愛さん、元バレーボール・山本隆弘さん、元体操・塚原直也さんらも登場する。授業は「インハイ.tv」で全国生配信され、誰でも視聴できる。
(THE ANSWER編集部)