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陸上100m高校新「9秒995」なのになぜ9秒台認定されない? 達成まで「あと5cm」、競泳とは異なる記録方式

衝撃的なタイムを喜ぶ清水空跳【写真:荒川祐史】
衝撃的なタイムを喜ぶ清水空跳【写真:荒川祐史】

異例の「タイムレース方式」はどう影響した?

 16歳の清水が出した素晴らしい記録。ただ、レースを見て少し残念な気もした。「タイムレース決勝」だったからだ。通常は予選、準決勝、決勝だが、今大会は予選上位24選手が3組に分かれて決勝レースを行い、タイムで順位を決める方式に変更された。長距離種目では決して珍しくはないが、短距離では異例。暑熱対策の一環ではあるが、仮に普通に決勝レースが行われていれば、結果はどうだっただろう。

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 実際に、この日は1組目の菅野翔唯(群馬・東農大二2年)が追い風参考ながら10秒06という好タイムをマーク。「負けたくなかった」という清水は、3組目で見えない相手と競って記録を出した。もし独走にはならず、同学年のライバルと競り合えば、あと5センチが伸びて9秒台が出たかもしれない。菅野もさらに9秒台に迫るようなタイムを出していたかもしれない。

 もちろん、すべては「たられば」。逆に勝負を意識してタイムを落とす可能性もあるし、純粋に「タイムで争う」決勝だったからこそ出た好記録なのかもしれない。ただ、独走であれだけのタイムを出せるのだから「競り合い」での走りも見たかった。レベルの高い選手がそろうだけに、なおさらだ。猛暑の日中に競技をするのを避けるためにレースを削減しているのだから、仕方ないのだけれど。

 そんな厳しい条件だったからこそ、清水の快走に驚く。五輪翌年は次の五輪に向けて新鮮なスターが飛び出すタイミング。桐生、サニブラウン、小池祐貴、山縣亮太に続く「9秒台スプリンター」へ、さらに28年ロサンゼルス五輪、32年ブリスベン五輪へ、日本陸上界を盛り上げる清水の成長が楽しみになる。

(荻島 弘一 / Hirokazu Ogishima)

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荻島 弘一

1960年生まれ。大学卒業後、日刊スポーツ新聞社に入社。スポーツ部記者としてサッカーや水泳、柔道など五輪競技を担当。同部デスク、出版社編集長を経て、06年から編集委員として現場に復帰する。山下・斉藤時代の柔道から五輪新競技のブレイキンまで、昭和、平成、令和と長年に渡って幅広くスポーツの現場を取材した。

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