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坂本花織、3回転半なしでROC勢に迫れた理由 鈴木明子「彼女には着氷後の0歩目がない」

3回転アクセル失敗でも1位、浮き彫りになるワリエワの強さ

 そして、首位に立ったのはワリエワ選手。樋口選手が成功した3回転アクセルが、彼女は冒頭でステップアウトとなり減点に。にもかかわらず、樋口選手らを上回り、1位になったことを不思議に思う方もいるかもしれません。

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 その要因については、3回転アクセル以降の構成です。3回転フリップ、3回転ルッツ―3回転トウループという2つのジャンプで3~4点の加点を引き出し、また3回転ルッツ―3回転トウループの連続ジャンプを基礎点が1.1倍になる後半に投入し、高い加点を得ていること。また、スピン、ステップでも非常に高い加点を獲得。特に柔軟性を生かした回転速度もあるスピンは圧巻で、ジャッジ全員が4~5点の加点をつけるレベルです。

 現在は一つ一つの要素の質が求められる時代。得点も積み重ねの要素が大きく、順位を分けるのは加点の幅になる。高難度のジャンプに注目は集まりますが、フィギュアスケートは総合的な評価である以上、一つ一つの完成度が高いワリエワ選手が強さを発揮しています。

 30選手が出場したSPで個人的に印象に残ったのが、ジュ・イー(朱易)選手です。

 団体戦でSP、フリーともに失敗が出て、今日の練習もジャンプはあまり決まらず。ジャンプに行く動作に不安が見え、本番は大丈夫かなと思っていたのですが、思い切った演技で転倒もなく、最後まで滑り切った。27位でフリーに進めませんでしたが、彼女の笑顔はうれしかった。

 19歳でまだ大きな国際大会に出た経験がなく、いきなり地元開催のオリンピックで重圧も計り知れないものがあったと思います。団体戦ではつらい想いをしたと思いますが、いつか「あの時の経験があったから強くなれた」と思える日が来てくれたらいいなと願っています。

 フリーは17日。メダル争いが注目されますが、日本勢に期待するのは、練習で積み重ねてきたものをすべて出し切ることだけ。

 もちろん、首位発進したワリエワ選手をはじめ、SP2位のシェルバコワ選手、SP4位のトルソワ選手もROC勢は4回転ジャンプを多く入れ、五輪史上最高難度の構成が見られると思います。しかし、SP日本の選手たちを見て感じたのは、それぞれが持っている自分の良さで勝負する姿勢。彼女たちが、どこに重きを置いて練習してきたか、よく分かるものでした。

 だからこそ“出し切ること”を心がけてほしい。この日までやってきたことを信じ、思い残すことなく、フリーを滑り切ってほしいです。

(THE ANSWER編集部・神原 英彰 / Hideaki Kanbara)

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鈴木 明子

THE ANSWERスペシャリスト プロフィギュアスケーター

1985年3月28日生まれ。愛知県出身。6歳からスケートを始め、00年に15歳で初出場した全日本選手権で4位に入り、脚光を浴びる。東北福祉大入学後に摂食障害を患い、03-04年シーズンは休養。翌シーズンに復帰後は09年全日本選手権2位となり、24歳で初の表彰台。10年バンクーバー五輪8位入賞。以降、12年世界選手権3位、13年全日本選手権優勝などの実績を残し、14年ソチ五輪で2大会連続8位入賞。同年の世界選手権を最後に29歳で現役引退した。現在はプロフィギュアスケーターとして活躍する傍ら、全国で講演活動も行う。

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