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坂本花織、3回転半なしでROC勢に迫れた理由 鈴木明子「彼女には着氷後の0歩目がない」

「THE ANSWER」は北京五輪期間中、選手や関係者の知られざるストーリー、競技の専門家解説や意外と知らない知識を紹介し、五輪を新たな“見方”で楽しむ「THE ANSWER的 オリンピックのミカタ」を連日掲載。注目競技の一つ、フィギュアスケートは「フィギュアを好きな人はもっと好きに、フィギュアを知らない人は初めて好きになる17日間」をコンセプトに総力特集し、競技の“今”を伝え、競技の“これから”につなげる。

女子ショートプログラムで見せた坂本花織の演技を鈴木明子が解説【写真:AP】
女子ショートプログラムで見せた坂本花織の演技を鈴木明子が解説【写真:AP】

「THE ANSWER的 オリンピックのミカタ」#81 五輪2大会出場・鈴木明子の女子SP解説

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 15日に行われた女子ショートプログラム(SP)は坂本花織が日本勢最上位の3位。表彰台独占の前評判もあるROC勢3人に割って入った。1位はドーピング違反で出場が危ぶまれたカミラ・ワリエワ。2位のアンナ・シェルバコワ、4位のアレクサンドラ・トルソワ(いずれもROC)に続き、3回転アクセルを成功させた樋口新葉が5位に。上位5人を日露で独占した。樋口とともに初出場の17歳・河辺愛菜は15位からフリーで上位進出を狙う。

 バンクーバー、ソチと五輪2大会に出場し、現地で取材するプロフィギュアスケーター・鈴木明子さんはこのSPをどう見たのか。日本勢の総括とともに、3回転アクセルや4回転ジャンプなしでROC勢を脅かす坂本の強さの理由について聞いた。(取材・構成=THE ANSWER編集部・神原 英彰)

 ◇ ◇ ◇

 4年に一度の「オリンピック」という大舞台。一人一人がいろんなプレッシャーを感じながらの演技だったと思います。その中で、特に後半の第4、5グループの選手たちは非常に自分自身に集中し、良い演技を見せてくれたSPでした。

 坂本選手は最も重圧がかかる最終滑走。「演技前から緊張で泣きそうだった」と演技後に言っていましたが、それを感じさせない素晴らしい演技。大きく、高さと幅のあるジャンプ。そして、着氷後もスピードが落ちない。彼女の持ち味が詰まったジャンプを3本見せ、3位に食い込みました。

 4回転をはじめ、高難度のジャンプが注目される時代。この日、他の日本勢2人も3回転アクセルに挑戦しました。しかし、坂本選手はそれらを跳ばずに世界で戦える。普段、あまりフィギュアを観ない方は「なぜ?」と思われるかもしれません。

 まず、彼女の武器は圧倒的なスピード。そして、それを生かしたジャンプの着氷後の「1歩目」に他の選手にはない強さの秘密があります。

 坂本選手は圧倒的なスピードからジャンプに入り、着氷後もそのスピードを生かすことができます。多くの選手は着氷でフリーレッグ(氷についていない方の浮き足)を後ろに引くことで、次の動作への流れを作りますが、彼女は助走のスピードを生かしたまま大きな弧を描くように幅のあるジャンプを跳び、そのままのスピードを着氷後の流れに生かして降りられる。着氷した時点で、次の1歩目の滑りにすでに繋がっているのです。

 簡単に思われるかもしれませんが、これは凄く難しい技術。ジャンプで高さを出したり、回転の速度を出したりすると、その反動で着氷して動きが詰まり、流れも止まる。そこからもう一度滑り出し、加速していきます。通常の選手は着氷の状態を「0歩目」とすると、彼女には「0歩目」がなく、降りた瞬間から「1歩目」になっている。そのスムーズな流れが、ジャンプそのものにとどまらない加点に繋がっています。

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鈴木 明子

THE ANSWERスペシャリスト プロフィギュアスケーター

1985年3月28日生まれ。愛知県出身。6歳からスケートを始め、00年に15歳で初出場した全日本選手権で4位に入り、脚光を浴びる。東北福祉大入学後に摂食障害を患い、03-04年シーズンは休養。翌シーズンに復帰後は09年全日本選手権2位となり、24歳で初の表彰台。10年バンクーバー五輪8位入賞。以降、12年世界選手権3位、13年全日本選手権優勝などの実績を残し、14年ソチ五輪で2大会連続8位入賞。同年の世界選手権を最後に29歳で現役引退した。現在はプロフィギュアスケーターとして活躍する傍ら、全国で講演活動も行う。

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