フィギュアのプログラムはどう作られる? “芸術家タイプ”の振付師とは意外な苦労も…
コロナ禍で「オンライン振り付け」も行われる時代に
オフシーズンに入る4月に中野さんはズエワ氏がいる米国に飛び、振り付けの指導を受けた。ここが、スケーターにとっては大切な時期。
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「先生と相談して曲を絞って『じゃあ、このCDにしましょう』と決まりますが、普通は(SPとフリーの規定時間)2分40秒や4分になっていないので、どの部分を使うかを考えて編集し、振り付けを作っていく。安藤美姫さんに聞いたのですが、彼女を担当したニコライ・モロゾフさんは曲をすべて聞いて『ここを使おう』『ここも使おう』と振り付けをしながら編集していく仕組み。感性で動く方もいて、スタイルもさまざまです」
完成までの期間はさまざま。覚えが早かった中野さんは5、6日間で2、3曲を作って帰国。しかし、2、3週間かける選手も少なくない。振付師は芸術家タイプが多いといい、気分が乗らずイメージが湧かない日は「今日は作りたくない、明日にしよう」と先延ばしにされることもある。
実際、中野さんも希望した曲を「この曲はあなたに合っていない」と振付師に言われたことがある。一度は話し合い、プログラムを作り始めたものの、3日経って「やっぱり気乗りしないから作りたくない」と言われ、振り出しに。結局、米滞在中に完成できず、翌月に再渡米した。
コロナ禍になって新しいスタイルのプログラム制作が生まれた。それはオンラインによるもの。渡航が難しい状況もあり、海外にいる振付師と「Zoom」などをつなぎ、コミュニケーションを図りながら作り上げていく。「新しい時代が来たなと感じました」と中野さんは明かす。
「『オンラインで振り付け』と聞くと難しいかもしれませんが、振り付け自体はできるとは思います。ただ、私は自分の目でどういう形で動いているのか、360度見ながら雰囲気を自分の目で確かめたいと思うタイプ。できれば目の前で見たものを自分のものにして、一緒に作り上げていきたいとは思います。でも、自分が今そういう状況になってしまったら同じようにオンラインでお願いしていたかもしれないと思います」
特に、五輪シーズンは勝負をかけたプログラムを作る。今、それぞれの選手が演じている振り付けはこの舞台に懸けた想いの結晶だ。
(THE ANSWER編集部)