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ジャンプの「教科書」だったキム・ヨナの技術 エッジの跡を見ても分かる選手の癖とは

「このジャンプと言えば?」の名手を挙げてくれた中野さん【写真:荒川祐史】
「このジャンプと言えば?」の名手を挙げてくれた中野さん【写真:荒川祐史】

中野さんが挙げる6種類の「このジャンプと言えば?」の名手

――そこで中野さんは自分のジャンプについて取り組みを変えるなど、変化はあったのでしょうか。

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「もう私はとにかく加点がつかない、癖だらけのジャンプだったので、シーズンオフに入ると1回転ではなく0回転から癖の見直しを毎シーズンし、なるべく癖を目立たせなくする作業もやりました。それでも、シーズンインに間に合わせないといけないので、矯正途中でも矯正途中のまま跳べるようにすることを毎年やってきた感じです。

 やはり癖があることによって、失敗のリスクも大きくなるのではないかと今振り返ってみて思います。型にはまった教科書通りのお手本のようなジャンプで、うまく力みが取れていたり、軌道にうまく乗れていたり、そしてエッジの乗り位置などもそんなに癖がないジャンプだったりしたら、失敗ももっと少なくできるんじゃないかなとも思います」

――中野さんのYouTubeで6種類のジャンプのうち、どの選手のどのジャンプがベストな跳び方なのかについて取り上げていましたね。ここでも、6種類のベストジャンプについて教えてください。

「『このジャンプと言えば?』と言われた時にぱっと出てくるスケーターが跳んでいるのがお手本のような素晴らしいジャンプです。一番印象に残っている証しだからです。選手本人の得意不得意もありますが、ダイナミックかつ印象に残っているのは、それだけインパクトのあるジャンプを跳んでいる証しで、美しいジャンプも、癖がないジャンプも大事ですが、人に印象を与えるジャンプもすごく大事です。

 私のYouTubeチャンネルで6種類のジャンプの私が思うベストをご紹介した時は、私が思いつくままに言った感じですが、見ている方がジャンプをぱっと思いつく選手、一言で言うと素晴らしいジャンプが印象に残っている選手はすごく大事なことです。あれだけの高さと飛距離がある、ガブリエル・デールマン選手(カナダ)のトウループと同じように跳べる選手はいないのではないかと思いますし、GOEが満点ついてもおかしくないと思いました。ほかにトウループで思いつかなかったくらいインパクトがあります。

 サルコウは圧倒的にもう安藤美姫さんです。安藤さんと一緒に練習したこともありますが、信夫先生からサルコウだけではなく『あのジャンプを見て、トウの付き方や跳び方をぜひ学んで欲しい』と言われたこともあるくらい。うらやましくなるほど、素晴らしい天性の才能の持ち主でした。本人は『遊びで4回転を跳んだ』と言っていましたが、遊びの感覚で4回転を跳べることがすごいですし、それはうまく力みが抜けているからではないかと思うので。そういうところも含めて安藤さんを選びました」

 ループは浅田真央さんですが、浅田さんはコンビネーションのセカンドジャンプによくループを使っていて、それが印象に残っているのもあります。一般的に1つ目のジャンプよりも2つ目の方がスピードは落ちるので高さも出しにくいのですが、浅田さんはたとえ多少スピードが落ちてしまっても2つ目のジャンプを回転速度で補っている身体能力が素晴らしかったです。2つ目の方がなぜか一気に速くなって、しっかりと回って降りてくる。あれは本当に素晴らしい。こまのように、細く回転していました」

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中野 友加里

THE ANSWERスペシャリスト フィギュアスケート解説者

1985年8月25日生まれ。愛知県出身。3歳からスケートを始める。現役時代は女子史上3人目の3回転アクセル成功。スピンを得意として国際的に高い評価を受け、「世界一のドーナツスピン」とも言われた。05年NHK杯優勝、GPファイナル3位、08年世界選手権4位など国際舞台でも活躍。全日本選手権は表彰台を3度経験。10年に現役引退後、フジテレビに入社。スポーツ番組のディレクターとして数々の競技を取材し、19年3月に退社。現在は講演活動を行うほか、審判員としても活動。15年に一般男性と結婚し、2児の母。YouTubeチャンネル「フィギュアスケーター中野友加里チャンネル」も人気を集めている。

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