ジャンプの「教科書」だったキム・ヨナの技術 エッジの跡を見ても分かる選手の癖とは
「THE ANSWER」は北京五輪期間中、選手や関係者の知られざるストーリー、競技の専門家解説や意外と知らない知識を紹介し、五輪を新たな“見方”で楽しむ「THE ANSWER的 オリンピックのミカタ」を連日掲載。注目競技の一つ、フィギュアスケートは「フィギュアを好きな人はもっと好きに、フィギュアを知らない人は初めて好きになる17日間」をコンセプトに総力特集し、競技の“今”を伝え、競技の“これから”につなげる。
「THE ANSWER的 オリンピックのミカタ」#1 連載「スペシャリスト論」特別版
「THE ANSWER」は北京五輪期間中、選手や関係者の知られざるストーリー、競技の専門家解説や意外と知らない知識を紹介し、五輪を新たな“見方”で楽しむ「THE ANSWER的 オリンピックのミカタ」を連日掲載。注目競技の一つ、フィギュアスケートは「フィギュアを好きな人はもっと好きに、フィギュアを知らない人は初めて好きになる17日間」をコンセプトに総力特集し、競技の“今”を伝え、競技の“これから”につなげる。
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「THE ANSWER スペシャリスト」を務める元フィギュアスケート日本代表・中野友加里さんはフィギュアの華、「ジャンプ」について解説。通常、「スペシャリスト論」でお届けしている連載を特別版として掲載する。前編では現役時代に世界で女子3人目のトリプルアクセルを成功させ、審判員の資格を持つ中野さんが「美しいジャンプとは」を語る。さらに、6種類のベストジャンプとも言える、それぞれの名手を挙げた。(聞き手=辛 仁夏)
◇ ◇ ◇
――フィギュアスケーターの美しいジャンプはどういうものだと考えていますか。
「これはスピンと同じで、佐藤信夫先生から気付かされたものでもあるのですが、高さや幅があったり、滞空時間が長かったり、そういうのも美しいと言えると思います。ただ、一番は癖がないジャンプだと思いました。それは選手をやっていて思いましたし、信夫先生から言われて気づきました。『無駄な力が入っていない、癖のないジャンプが一番美しい』と。その通りだなと思いました」
――信夫先生自身にはお手本を見せてもらったのでしょうか。それとも、こういう選手のジャンプが無駄な力が入っていない、癖のないジャンプだと提示されたのでしょうか。
「それが、後者なんです。実は信夫先生も結構、癖のあるジャンプを跳んでいたと聞いています。当時、信夫先生は私から見ると昔の方なので(笑)。まだ、ビデオなどもない時代で、写真をコマ送りで研究しながら、自分でジャンプを磨いたと言っていました。なので、もう顔が氷面に付くのではないかというくらい倒して、力技でジャンプを跳んでいた。昔はそうだったらしいです。
ただ、だんだんいろんな改善が進み、選手たちが練習していて気づいたと思うのですが、先ほど言った後者の部分について『キム・ヨナ(韓国)のジャンプを想像して、実際にやってみてほしい』『キム・ヨナは教科書に載っているお手本のようなジャンプを跳んでいるので真似できないと思う』と言われました。確かに真似できないほど、肩の力が抜けていて、全身の力みもなく、ジャンプに入る前もスムーズで、軽やかに跳んでいく。
とても高さがあるダイナミックなジャンプではないのに飛距離があって、すごく質の良い美しいジャンプだと思いました。まだ、私は現役時代で一緒の舞台に立っていた頃にそう言われ、確かにそうだなと思い、気づかされました」
――同じ大会で、練習で滑って跳んでいるシーンを見ていたということでしょうか。
「そうです。でも、その話をされたのは日本に帰ってきてからの新横浜のリンクだったのですが、そういう目線で見ると一気に彼女に対して見方が変わりました」