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「走り」は人をどう幸せにするのか 五輪最終日、“走らず嫌い”の日本人への提案

心を整え、人を健康にする「それが走りが与える幸せ」

 サッカーも野球もバスケットボールも……。走りはあらゆる競技に共通し、五輪ではいろんな選手が走り、汗を流し、戦う姿に胸を打たれ、最終日にマラソンで幕を閉じた。では「走り」は人をどう幸せにするのか。 

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「走りがもたらす幸せの一つとして、1日のうちの20~30分程度の時間を運動に充てて、自分と向き合う時間を作った方がいいのではないか。特に社会人として働き出し、日々に忙殺されると、その時間を捻出するのも億劫になり、難しくなると思いますが、その機会を敢えて作って、自分と向き合うことをやった方が幸福度は上がる気がしています。また、その理由はいろいろあると思います。

 特に『歩く』『走る』の効果の一つはホルモンの分泌が促されるところ。メンタルの状態は間違いなくホルモンに影響を受けます。ジョギングがマインドフルネスの領域でも使われますが、そういう意味でも心が整う。歩く、走る時間は雑念が取り払われやすいので、そこで自分のやるべきこと、今後どうしていくか、考えを整理するという時間にも充てられ、自分と向き合う対話に価値が生まれます」(伊藤)

「僕が思う走りの強みって、1人でもやれるということ。野球やサッカーは誰かと一緒じゃないないとできないし、フットサルを社内でやろうといっても人数を集めないとできない。でも、走りは向き合う相手が自分。水泳もそうです。いわゆる個人スポーツは『対誰か』という指標ではなく、『対自分』でどう変わっていくか。そこを楽しめる人は走りを好きになって続けている人が多いです。

 例えば、僕の知っているランニングクラブは、みんな向いている矢印が他人ではなく自分にあります。だから、『このマラソンに出て優勝します!』という意識の人はあまりいない。自分なりのベストの3時間とか、4時間とかを切りたいと、矢印が自分に向いている人。それがすごく大事に思います。走りって始めやすいので。今から着替えて靴を履けば、すぐにでもできませんか?」(秋本)

 最後に伊藤氏はこう話し、「走り」が持つ最大の価値を訴えた。

「もう一つ、間違いなく推したいのは、様々なスポーツがあるなかでも『やっぱり“歩く”“走る”なんだよ』ということ。例えば、江戸時代まで日本人は1日3万歩ほど歩いていたと言われています。飛脚なんて、どこまでいくのかという距離を走っていました。それが、ここ100年くらいで便利・快適になりすぎて歩く歩数が圧倒的に減り、日本人の足は弱っていると言われています。

 海外の20代自転車選手が骨密度を計ったら80歳代だったというデータがありました。自転車は足で接地しないためで、それほど足の骨への刺激とホルモン分泌は重要。日本人は指が弱い課題もあり、それらを整える役割ができるのは歩く走る。生活習慣病が増える背景には歩数の減少も一因にあります。いったん原始的なところに立ち返り、不健康を解消する。こうして人が健康になることが、走りが人に与える幸せだと思います」(伊藤)

■伊藤友広 / Tomohiro Itoh

 1982年生まれ、秋田県出身。国際陸上競技連盟公認指導者(キッズ・ユース対象)。高校時代に国体少年男子A400メートル優勝。アジアジュニア選手権日本代表で400メートル5位、1600メートルリレーはアンカーを務めて優勝。国体成年男子400メートル優勝。アテネ五輪では1600メートルリレーの第3走者として日本歴代最高の4位入賞に貢献。現在は秋本真吾氏らとスプリント指導のプロ組織「0.01 SPRINT PROJECT」を立ち上げ、ジュニア世代からトップアスリートまで指導を行っている。

■秋本真吾 / Shingo Akimoto

 1982年生まれ、福島県出身。双葉高(福島)を経て、国際武道大―同大大学院。400メートルハードルで五輪強化指定選手に選出。200メートルハードルアジア最高記録(当時)を樹立。引退後はスプリントコーチとして全国でかけっこ教室を展開し、延べ7万人を指導。また、延べ500人以上のトップアスリートも指導し、これまでに内川聖一(ヤクルト)、槙野智章、宇賀神友弥(ともに浦和)、神野大地(プロ陸上選手)、阪神タイガース、INAC神戸、サッカーカンボジア代表など。

(THE ANSWER編集部・神原 英彰 / Hideaki Kanbara)

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