選手が靴をオーブンで温めるワケ 中野友加里が語る「フィギュアスケートと靴」の秘密
ほかの人の靴でも跳べる天才的な選手はごく一部
――競技によっては練習と本番で異なる靴を使うこともありますが、フィギュアスケートでは考えにくいですね。
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「フィギュアスケートでは、ほとんどあり得ないことです。選手によっては同じメーカーとサイズが一緒であれば、ほかの人の靴でも跳べるという天才的な選手もいますが、それはごく一部。こだわる人は何十足も履いて試します。メーカーもたくさんあり、特に今は新しいものがどんどん出てくるので、しっくり来るとか、ちょっと違うとか、多くの選手がこだわっています」
――ちなみに、中野さんの好みはどんな靴が好みだったのですか?
「私は日本製しか合わなかったんです。海外のものも履いてのですが、感覚が全く合わず、跳べなくて。機能面では海外製の方が最先端で軽かったのですが……。日本製と海外製では、素材、靴の形、底までの深さが全く違います。エッジの種類も実はたくさんあり、オールマイティーなものからジャンプ、スピンに特化したものまで。
ジャンプならトウ(つま先)のギザギザが鋭いもの、スピンを回るためにカーブが違うもの、いろんな種類があります。私はオールマイティーなものにしていました。色はシルバーかゴールドしかありませんでしたが、今はエッジの土台にジェラルミンを使っていて、いろんな色が作れるんです。好みに合わせてピンクにすることもできます」
――外から見ていると、なかなか見分けがつくにくい世界ですが、選手の思いが詰まっているんですね。
「エッジは色で選手それぞれの個性があり、こだわりが見られます。そういう小さなことから、それぞれの選手の好みが分かると、選手の気持ちに近づける一つのきっかけになるのかなと思います」
■中野友加里/THE ANSWERスペシャリスト
1985年生まれ。愛知県出身。3歳からスケートを始める。現役時代は女子選手として史上3人目の3回転アクセル成功。スピンを得意として国際的に高い評価を受け「世界一のドーナツスピン」とも言われた。05年NHK杯優勝、GPファイナル3位、08年世界選手権4位。全日本選手権は表彰台を3度経験。10年に引退後、フジテレビに入社。スポーツ番組のディレクターとして数々の競技を取材し、19年3月に退社。現在は講演活動を務めるほか、審判員としても活動。15年に結婚し、2児の母。自身のYouTubeチャンネル「フィギュアスケーター中野友加里チャンネル」を開設し、人気を集めている。
(THE ANSWER編集部・神原 英彰 / Hideaki Kanbara)